2001 Fiscal Year Annual Research Report
鍼刺激が排尿中枢に及ぼす影響に関する神経生理学的検討
Project/Area Number |
12671551
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Research Institution | Kyoto PrefecturalUniversity of Medicine |
Principal Investigator |
浮村 理 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (70275220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川喜田 健司 明治鍼灸大学, 生理学教室, 教授 (60076049)
河内 明宏 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (90240952)
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Keywords | 鍼治療 / 排尿中枢 / 過活動性膀胱 / 電気生理学 / 尿失禁 / 抗コリン剤 / 膀胱 / ニュウロン |
Research Abstract |
高齢化社会を迎え、頻尿/尿失禁は社会問題化している。頻尿/尿失禁の原因である過活動性膀胱の治療には、一般的には抗コリン剤や抗コリン作用をもつ三環系抗うつ剤が用いられている。またalternative therapyとして仙骨部鍼刺激が有用であることを我々は報告した。鍼刺激はヒトと同様にラットでも膀胱内圧測定検査における膀胱の収縮性を抑制するが、上位の橋排尿中枢に対する効果はほとんど知られていない。今回ラットを用い橋排尿中枢に対する鍼刺激の影響を検討し、頻尿/尿失禁の治療薬剤による効果とも比較検討した。 方法は、SD系雄性ラット(250-500g)を用いウレタン(1.0g/kg)麻酔下に、まず膀胱にカニューレを挿入し膀胱内圧を測定した。膀胱が自律収縮を起こすまで生理食塩水を0.2ml/秒の速度で注入した。脳幹部にガラス管電極を刺入、膀胱収縮に先行して発火するニューロンを記録した。抗コリン剤(塩酸オキシブチニン)、抗うつ剤(塩酸クロミプラミン)を頸静脈より投与した場合、仙骨部骨膜を鍼灸針で1分間刺激した場合、それぞれの膀胱収縮とニューロンの発火に及ぼす影響を検討した。ガラス管電極の位置はPontamin Skyblueでマークした。結果、鍼刺激によって膀胱収縮を抑制した場合、橋排尿中枢のニューロンの発火は減少した。抗コリン剤で膀胱収縮が抑制されると、橋排尿中枢のニューロンの発火は増加、抗うつ剤で膀胱収縮が抑制されるとニューロンの発火は減少した。 以上の結果より、仙骨部鍼刺激は脊髄中枢に作用して膀胱収縮を抑制していると考えられているが、上位中枢にも作用していることがわかった。抗コリン剤、抗うつ剤は末梢では同じ効果を示すが、中枢では逆の効果を示していることがわかった。 本研究により、仙骨部鍼刺激は、膀胱の収縮性を抑制するが、その機序として脊髄中枢に作用して膀胱収縮を抑制するだけでなく、排尿の上位中枢にも作用し、抗コリン剤による膀胱抑制作用とは異なり、抗うつ剤と一部共通した作用機序を有すると考えられる科学的裏付けが示された。
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