2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12671589
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Research Institution | HAMAMATSU UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE |
Principal Investigator |
大井 豪一 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助手 (10283368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 浩 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (40178330)
金山 尚裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70204550)
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Keywords | 羊水塞栓症 / Sialyl Tn / Zinc coproporphyrinl |
Research Abstract |
我々は、本疾患について共同研究をしている米国のDr.Bensonの羊水塞栓症診断基準を参考にし、新たな診断基準を設けた。羊水塞栓症を、確定羊水塞栓症と臨床的羊水塞栓症の2つのカテゴリーに分けた。組織中に胎児成分(胎便・胎毛・扁平上皮など)を認めた症例は確定羊水塞栓症とし、生存例や、剖検の承諾が得られなかった症例において、以下の症状を呈した場揚合を臨床的羊水塞栓症と規定した。 臨床的羊水塞栓症の診断基準 1.妊娠中または分娩後12時間以内の発症 2.下記に示した症状・疾患(ひとつ、またはそれ以上でも可)に対して集中的な医学治療が行われた場合 (1)心停止 (2)分娩後2時間以内の大量出血 (3)播種性血管内凝固症候群 (4)呼吸不全 3.観察された所見や症状が他の疾患で説明ができない場合 また、確定羊水塞栓症とは、臨床的羊水塞栓症症状を呈した疾患において、剖検例により検体組織中に胎児成分を認めた症例とした。 2004年2月までに確定羊水塞栓症20例、臨床的羊水塞栓症115例、合計135症例の検体測定依頼があった。羊水塞栓症未発症症例の母体血清中STNとZn-CP1値を測定し、それぞれの閾値を47.0U/ml,1.6pmol/mlとし、羊水塞栓症を発症した母体血清中STNおよびZn-CP1値測定の有用性に関して検討を行った。確定羊水塞栓症においては、STN 163.4±229.1U/ml,Zn-CP1 30.2±26.7pmol/mlであり、また臨床的羊水塞栓症においても、STN 70.5±198.5U/ml,Zn-CP1 84.0±193.9pmol/mlであり、正常閾値に比較し高値を示した。また、確定羊水塞栓症におけるSTNおよびZn-CP1陽性率は、それぞれ84.6%と75.0%であり、臨床的羊水塞栓症では、18.5%と57.0%であった。羊水塞栓症診断において、母体血清中STNおよびZn-CP1値測定は、有用であるととが再確認された。 臨床的解析では、本症の52.3%は経産婦であり、36.4%は誘発分娩が占め、頻度的に発症は稀ではあるが、経産婦の不必要な医学的適応のない誘発分娩は、羊水塞栓症予防の観点からは、安易に行わないことが賢明と考える。また、胎児成分である胎便や羊水の母体循環への流入は、羊水塞栓症の発症原因であるため、軟産道強靭症や過強陣痛による頚管裂傷や子宮破裂は、そのリスクを高めることになる。したがって誘発の際は、頚管の熟化を十分に行った後に、注意深く母児に対するモニターリングを行いながら、誘発を進めることが重要である。その他、合併症として重症妊娠中毒症19.3%や切迫早産10.2%と、これらの疾患に多く発症する傾向があった。 現在までの活動により、平成15年8月日本産婦人科医会より羊水塞栓症の血清検査事業として認められ、その後検体照会が極端に増加している。
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Research Products
(2 results)