2001 Fiscal Year Annual Research Report
単純ヘルペスウイルス再活性化による末梢性顔面神経麻痺発症機序の解明
Project/Area Number |
12671644
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
古田 康 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (60261301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤 洋文 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (30292006)
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス / 水痘帯状疱疹ウイルス / Tumor necrosis factor-α / 抗ウイルス療法 / MRI / 抗ガングリオシド抗体 |
Research Abstract |
1末梢性顔面神経麻痺症例における血清中抗ガングリオシド抗体の測定 自己免疫性ニューロパチーであるGuillain-Barre症候群やMiller-Fisher症候群においてはウイルスや細菌感染を契機とする自己免疫反応によって神経系の構成成分の1つであるガングリオシドに対する抗体が産生され、末梢神経の障害が生じるとされている。今回、再発性・交代性顔面神経麻痺26症例について、血清中抗ガングリオシド抗体を測定した。ELISA法によりIgG抗GalNAc-GD1a抗体が交代性麻痺の2症例で陽性となったが、臨床的な意義は不明であった。2症例ともHSV・VZV・CMVの再活性化は認められなかった。 2末梢性顔面神経麻痺症例におけるMRI 末梢性顔面神経麻痺症例において、MRIにおける顔面神経のガドリニウム増強像の有無と、HSV・VZV再活性化との関連を調べた。ヘルペスウイルスの再活性化がPCR法にて確かめられた時期にMRIを撮影した症例においては、ガドリニウム増強の範囲が狭く、内耳道底または膝神経節に限局する傾向が認められた。ヘルペスウイルスが検出されなくなった時期にMRIを撮影した症例においては、神経全般にガドリニウム増強像が認められた。ウイルス再活性化により内耳道底または膝神経節が最初に障害される機序が推測された。 3患者血清のTNF-αの測定 TNF-αは脱髄性疾患のマーカーでもある。麻痺患者血清中のTNF-αをELISA法で測定した。その結果、HSV-1再活性化症例、VZV再活性化症例、Bell麻痺症例における差異は認められなかった。HSV-1再活性化とそれによる脱髄が麻痺発症に関与している証拠は得られなかった。 4HSV-1再活性化を伴う症例に対する抗ウイルス療法についての検討 PCRを用いた迅速診断により、HSV-1再活性化を伴う麻痺症例に対してプレドニンとアシクロビルの併用療法を施行した。併用療法を施行した12例の治癒率は83%であり、プレドニン療法症例における治癒率(71%)との間に有意差は認められなかった。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] Furuta Y: "Herpes simplex virus type 1 reactivation and antiviral therapy in patients with acute peripheral facial palsy"Auris Nasus Larynx. 28巻. S13-S17 (2001)
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[Publications] Ohtani F: "Herpes virus reactivation and serum tumor necrosis factor-α levels in patients with acute peripheral facial palsy"Auris Nasus Larynx. 28巻. S145-S147 (2001)
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[Publications] Furuta Y: "Quantitation of varicella-zoster virus DNA in patients with Ramsay Hunt syndrome and zoster sine herpete"Journal of Clinical Microbiology. 39巻. 2856-2859 (2001)
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[Publications] Suzuki F: "Herpes Virus Reactivation and Gadolinium-Enhanced Magnetic Resonance Imaging in Patients with Facial Palsy"Otology and Neurotology. 22巻. 549-553 (2001)
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[Publications] Furuta Y: "Western blot analysis for diagnosis of Lyme disease in acute facial palsy"Laryngoscope. 111. 719-723 (2001)
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[Publications] 古田 康: "顔面神経麻痺とウイルス"耳鼻咽喉科領域感染症Q&A. 80-81 (2001)
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[Publications] 古田 康: "末梢性顔面神経麻痺症例における抗ボレリア抗体の検索"Facial Nerve Research. 21巻. 51-53 (2001)
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[Publications] 古田 康: "VZV再活性化症例における唾液中VZV DNAの定量と抗ウイルス療法の効果"Facial Nerve Research. 21巻. 42-44 (2001)
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[Publications] 大谷文雄: "再発性・交代性顔面神経麻痺症例における血清中抗ガングリオシド抗体の測定"Facial Nerve Research. 21巻. 49-50 (2001)
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[Publications] 古田 康: "向神経性ウイルスと顔面神経麻痺"CLIENT219顔面神経障害. 巻. 43-50 (2001)
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[Publications] 古田 康: "ヘルペスウイルス再活性化が疑われる耳疾患の場合、これを確定するにはいかなる検査を行うか"耳鼻咽喉科・頭頸部外科クリニカルトレンドPart3. 巻. 123-124 (2001)
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[Publications] 古田 康: "ベル麻痺"今日の耳鼻咽喉科・頭頸部外科治療指針. (印刷中).