2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12671648
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
和田 哲郎 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (10282360)
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Keywords | 蝸牛神経複合活動電位 / 蝸牛鼓室階カニュレーション / 肝細胞増殖因子 / 音響外傷 / 閾値上昇 |
Research Abstract |
蝸牛への薬剤直接投与法を用い,肝細胞増殖因子(HGF)の内耳に与える影響をみた。実験動物にはモルモットを使用し,局所麻酔下に乳突骨胞を開き,蝸牛基底回転鼓室階外側壁からカテーテルを挿入し,浸透圧ポンプで薬液注入し,顔面神経管経由の留置電極を用いて聴覚閾値の変化を測定した。強大音による障害蝸牛に対して強大音負荷前から上記の手法を用いてHGFを直接投与し蝸牛機能の変化を観察し,コントロールとしての人工外リンパ投与群と比較した。 強大音による障害蝸牛では,障害発生直後の蝸牛機能は対照群と差がないにも関わらず,1週間経過後の蝸牛機能は対照群よりも改善傾向がより強く認められた。ただしこれは有意差ではなかったため,より保護効果の高い条件を検討中である。HGFは種々の細胞に対して増殖および分化を強力に促す増殖因子であることが認められているが,用いた強大音のレベルは他の組織学的検討から類推する限り蝸牛有毛細胞の脱落をきたす強さではない。また有毛細胞の脱落を引き起こす傷害の強さでは細胞が再生され機能が1週間で回復するとは考えにくい。現時点では成熟哺乳類蝸牛有毛細胞の再生が未だに確認されていないという問題もある。 種々の増殖因子ないし神経栄養因子の生理活性の内の1つとして不可逆性の傷害に至る細胞の変化を抑制する作用が報告され,類似の作用を持つGDNFで強大音に対して蝸牛保護効果を上げることができる可能性も示唆されている。今後の課題として,HGFの濃度などを変え蝸牛の保護に最も有効な条件とその上での効果の有無をみること,および,HGF群と人工外リンパ群の間に組織学的にも違いが認められるかをみていく必要がある。
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