2000 Fiscal Year Annual Research Report
嗅粘液性嗅覚障害の病態解明のための分子生物学的研究
Project/Area Number |
12671655
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西村 俊郎 金沢大学, 医学部・附属病院, 講師 (80251958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石丸 正 金沢大学, 医学部・附属病院, 助手 (10272965)
三輪 高喜 金沢大学, 医学部, 助教授 (20229909)
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Keywords | 嗅上皮 / 嗅粘液 / Na^+ / K^+ATPase |
Research Abstract |
嗅覚障害におけるステロイド剤の点鼻や全身投与の有効性は日常臨床にてしばしば経験するが、その作用機序は必ずしも明らかにされていない。嗅覚障害を訴える症例には鼻腔内に明らかな炎症所見がなく原因を特定できない場合も多いこと、またそのような症例でもステロイド剤の有効例がみられることが指摘されている。そこで我々は嗅覚の受容において最末梢に存在する嗅上皮を覆う粘液の性状が嗅覚受容に重要であるという報告を基に、電解質(特にナトリウムイオン)の濃度の調節に関わる蛋白の発現のステロイド投与による影響について検討した。対象と方法:Wistar系ラットに1%硫酸亜鉛水溶液を点鼻した嗅上皮障害モデルに、デキサメサゾンを障害当日から形態学的に再生が完了する14日間0.1mg/kgを腹腔内投与した。Na^+-K^+exchenger(NHE)とNa^+,K^+-ATPaseの発現の変化を定量的real-time PCR法を用いてm-RNAレベルでステロイド非投与群と比較検討した。結果:ステロイド投与群の嗅上皮ではNHE-1の発現は30%まで減少したのち嗅上皮の再生が完成する2週間後には正常レベルに復した。Na^+,K^+-ATPaseはステロイド投与群で、嗅上皮の再生に伴い発現の増加がみられた。ステロイド非投与群ではNHE-1の発現は再生が完了した段階で正常の2倍近くの過剰発現がみられNa^+,K^+-ATPaseは投与群の60%の発現であった。考察:嗅細胞や支持細胞、腺細胞の障害と再生に伴い、ステロイドはNHE-1の過度の活性上昇を抑制し細胞の障害を軽減し、Na^+,K^+-ATPaseの発現を促進してBowman腺の腺管レベルでの嗅粘液中の腺管細胞を経由したNa^+の再吸収に寄与する可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 寺西重和: "ラット嗅覚障害モデルでの嗅上皮におけるNa^+,K^+-ATPase,Na^+-K^+ exchanger,グルココルチコイドレセプターの発現に関する研究"金沢大学十全医学会雑誌. 109巻4・5号. 330-342 (2000)