2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12671693
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
松田 素子 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 発生学部, 主任研究員 (40165832)
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Keywords | 内耳発生 / β-カテニン / ラット胚 / 全胚培養 / ネスチン |
Research Abstract |
ラット耳プラコードに一過的に強く発現するβ-カテニンは、耳プラコードの細胞増殖を促進させ、そこから遊出する聴神経細胞の分化に関わっていると考えられる。聴神経細胞群にはβ-カテニンの発現は認められなかったが、ネスチンの発現が一過的に観察された。ネスチン発現を攪乱させても、聴神経細胞群の遊出に変化は見られなかった。 1)ラット発生期内耳におけるネスチンの発現 SDラット胚を経時的に抗ネスチン抗体で染色し、内耳発生におけるネスチンの発現を調べた。 胎生10.5日では、染色は、耳プラコード域の神経管腹側外層から遊出する細胞群、第2鰓弓中の顔面・聴神経細胞群に、繊維状に観察されたが、耳プラコードには認められなかった。胎生11.5日に、耳プラコードは耳胞に発生する。耳胞にも染色は見られなかったが、耳胞から腹側域に分布する聴神経細胞群に、繊維状の染色が観察された。この染色は、発生が進むと消失した(胎生13.5日)。 これらの結果は、聴神経細胞群に一過的に発現するネスチンが、聴神経細胞の遊出・分化に関わっている可能性を示唆している。 2)カリクリンA(CA)処理ラット胚における聴神経細胞発生 SDラット9.5日胚を、CA、あるいは、K252aを含むラット血清中で48時間培養し、聴神経細胞分化を調べた。 CA処理されたラット胚では、対照では神経管中に繊維状に認められるネスチン染色が、神経管外層に点状に認められ、神経管細胞の配列は乱れていた。しかし、対照と同様、耳プラコードに染色は見られなく、耳プラコード細胞の配列も正常であった。耳プラコードから遊出した聴神経細胞群の分布・量は、対照と同様であったが、ネスチン染色は繊維状ではなく点状を示しており、聴神経細胞の形態も、紡錘形でなく球形を示すものが多く観察された。 聴神経細胞の遊出・分化に、ネスチンは関わっていないと推定される。
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Research Products
(1 results)