2001 Fiscal Year Annual Research Report
眼創傷治癒におけるp130^<CAS>の果たす役割
Project/Area Number |
12671707
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大黒 伸行 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (00303967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 幸次 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (10213183)
渡辺 仁 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (60252673)
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Keywords | p130^<CAS> / RGDSペプチド / 細胞接着 / 角膜上皮細胞 / 水晶体上皮細胞 / 網膜色素上皮細胞 / 角膜実質細胞 / メラノーマ |
Research Abstract |
平成12年度の研究において我々は、RGDSペプチドが、プラスチックの培養皿上で遺伝子導入によって不死化された角膜上皮細胞の接着を阻害しないが、同様に不死化された水晶体上皮細胞と網膜色素上皮細胞の接着は阻害することを見出した。この現象がSV40と導入したためか否かを検討するため、正常の角膜上皮細胞および正常の水晶体上皮細胞を用いて同様に行ったが同じ観察結果を得た。正常の上皮細胞は継代培養が困難であることと、生じた現象が同じであったことから、この現象の詳細を検討する以後の実験にはSV40導入した不死化細胞を用いた。 RGDSペプチドはα5β1インテグリンとの結合を介して細胞の接着を阻害することが知られているため、この現象は各細胞におけるインテグリンの発現パターンが異なるからではないかと考え、フローサイトメトリーにより各細胞のインテグリン発現を検討した。予想したように、角膜上皮ではα5β1インテグリンの発現は低く、α2β1インテグリンの発現が高かった。一方、水晶体上皮や網膜色素上皮ではα3β1インテグリンとα5β1インテグリンの発現が高かった。このことからインテグリンの発現の差異がRGDSペプチドに対する反応の違いであると推測された。しかしながら、細胞外マトリクス(ECM)の存在下ではすべての細胞がRGDSペプチドを加えても細胞接着を阻害されなかった。ECMは生体のいたるところに存在するためRGDSペプチドを眼疾患に応用することは困難に思えた。 ところが驚いたことに、メラノーマの細胞はECMが存在してもRGDSペプチドを加えると細胞接着が阻害され、細胞が浮遊するという現象を我々は発見した。メラノーマは欧米に比較してわが国において頻度は低いもののその生命予後は極めて悪く、化学療法や外科的治療も効果なく現在のところ放射線治療以外に治療方法がない。今回の我々の発見はRGDSペプチドが正常の眼由来の細胞は障害せず、メラノーマ細胞のみをターゲットとして接着阻害することから、臨床応用が期待される。平成14年度はこの点についてさらに詳細に検討したい。
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