Research Abstract |
目的:調節と輻湊制御モデルは,AC/A比やCA/C比の特定の組み合わせにおいて,眼位ずれを補正しようとする融像性輻湊のデマンドが,CA/Cクロスリンクを通じて,大きな調節誤差を引き起こすと予測している(Schor C.,Ophthal.Physiol.Opt.19,1999)。我々は,この仮説を斜位の患者を対象として検証した。 方法と対象:両眼開放型赤外線オートレフ(WV-500)により,40cmの距離においた調節視標を,片眼または両眼視下に5分間測定した。測定前に,調節または輻湊順応の影響を除くため,半透明ゴーグルを5分間装着させた。測定の最初(non-adapted condition)と最後(adapted condition)の10データーを,片眼,両眼視間で比較した。被検者は,近見調節視標に対して両眼単一融像可能な,間欠性外斜視,代償不全性外斜位,内斜位の32症例(斜視角:16PD eso-45PD exo,年齢:5-14歳)。 結果:non-adapted conditionでは,外斜偏位をもつ患者群では,片眼視より両眼視の方が,より大きい調節(0.13-1.3D),つまり調節リードまたはより小さい調節ラグを示した。逆に,内斜偏位を示す患者群では,片眼視より両眼視の方がより小さい調節(0.3-1.9D),つまりより大きい調節ラグを示した。片眼視と両眼視での調節量の差は,個々のCA/A比または斜視角とおおまかな相関がみられ,さらに時間とともに軽減する傾向がみられた(adapted condition)。 結論:調節レベルは,斜位角に影響されている。特に間欠的な斜視を示す患者では,調節の不安定の原因となるであろう。しかし,モデルの予想のように,融像状態が長く続けば,順応機転により,このような調節誤差は低下するものと思われる。
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