Research Abstract |
緑内障手術の成否を決める主な要因に,線維芽細胞増殖による流出路の閉塞がある.我々は,この過程に関わるFGF-2と結合する未知タンパク質FAPの遺伝子を,酵母two-hybrid系を用いて単離しその機能の解析を進めている. 1.細胞内におけるFAPの分布 FAPに特異的な単クローン抗体を作製し,これを用いた免疫蛍光染色法により様々な培養細胞におけるFAPの細胞内分布を調べた.その結果、様々な細胞においてFAPは細胞内で微小管によく似た細胞骨格様の繊維状構造をとっているのが観察された.他方,FGF-2は,細胞の核に強く局在し,一部細胞質にも均一に分布していた. 2.細胞内のFAPの可溶化 上記の結果からFAPが細胞骨格様に分布する事が観察されたので,このタンパク質が細胞のどの分画に分布するのかを,遠心分離法とウエスタンブロット法を用いて調べた.その結果,FAPの大部分は不溶分画に存在していた.他方,チュブリンは,可溶画分と不溶画分にほぼ等量存在していた.また,不溶画分のFAPは,塩濃度を下げたところ,約50%が可溶化された.また,Triton X-100およびCHAPSなどの可溶化剤やHClあるいはEDTAなどでも,一部可溶化された.FAPが可溶化され難いのは細胞骨格様の分布をしているためと思われた. 3.TaxolおよびVinblastineの影響 FAPは,微小管様に分布することがわかったので,微小管の脱重合を阻害するTaxolと,微小管形成を阻害するVinblastineが,FAPの細胞内分布に与える影響を調べた.その結果、Taxolでは微小管の増生とともにFAPの線維も増生した.また,Vinblastineでは微小管構造は崩壊したが,FAPは太い線維構造をとっていた. 4.細胞分裂期におけるFAP 細胞増殖の特に分裂期にはチュブリンは紡錘糸を形成するが,この時のFAPの細胞内分布を調べた.その結果,prophaseからanaphaseにかけて,FAPはチュブリンと分離していたが,この時FGF-2は染色体と分離し細胞全体に分布していた.他方,telophaseからinterphaseでは,FAPはチュブリンと再び付随して分布していたが,この時FGF-2は核内に再分布していた. これらの結果から,FAPはモータータンパク質等と共同して,間期には微小管様の構造をとりFGF-2の核内あるいは細胞外への輸送に関係し,細胞分裂期には,FGF-2の核内への再分布に関係しているのではないかと予想している.
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