2000 Fiscal Year Annual Research Report
間葉系間質幹細胞、遺伝子含有担体を使った組織工学由来骨再生と分子機構の解析
Project/Area Number |
12671751
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
平野 明喜 長崎大学, 医学部, 助教授 (90208835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 徹 長崎大学, 医学部, 教授 (60136661)
秋田 定伯 長崎大学, 医学部・附属病院, 助手 (90315250)
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Keywords | 骨代謝 / 頭蓋骨欠損 / 細胞内情報伝達 |
Research Abstract |
間葉系の骨再生、骨新生に有効な因子の同定を目的とし、成長因子、サイトカインの内、IL-6ファミリーの一つである白血病抑制因子(LIF:Leukemia Inhibitory Factor)は、強力な形質変換作用、分化促進作用を有する。その標的組織の一つに骨組織があり、in vitroにおいて骨骨形成及び骨吸収の促進、in vivoにおいて骨形成の促進(マウス)等の作用が報告されている。そこでラットを用いて頭頂骨部に骨欠損状態を作成し、その部位にLIF cDNAを添加して、同部の骨形成を観察した。10週令Wistar系ラットの頭頂骨の左右に各1ヶ所づつ直径4mmの骨欠損部を作成した。担体としてゼラチンスポンジを使用し、これを骨欠損部分に挿入した後、対照群は、ベクターのみのリン酸緩衝生理食塩水5μlを添加し、LIF cDNAは0.1、1、10μg/5μlを添加した。また陽性対照群として、骨形成蛋白質(BMP-2)2μg/5μlを添加した群も作成した。ラットは術後1、3、5、10週目に安楽死させ、骨欠損部を含めて頭頂骨を切り出し、肉眼的観察、Dual energy x-ray absorptiometry(DEXA)を用いて、骨欠損部の骨密度を計測した。また薄切標本を作製し、H&E染色、LIFの免疫染色、in situ hybridization法を行ないLIFの発現を観察した。今回の実験系において、骨密度の経時的変化、H&E染色の結果では、LIF cDNA導入群は対照群と比較した場合、術後1週目では差は認められなかったが、術後3週目には、LIF cDNA導入群の骨密度は対照群と比較して有意に高値を示し、H&E染色標本においても、対照群と比較してLIF cDNA導入群は骨形成が多く認められ、LIFの骨形成および骨の再構築を伺わせた。また、LIF cDNA導入群とBMP添加群を比較した場合、ほぼ同程度の骨密度の変化を示しており、H&E染色標本でも、ほぼ同程度の骨形成の状態であった。これより発現ベクター中のLIFはBMPと同程度の骨形成能があるのではないかと推測された。免疫染色、In situ hybridizationにおいても術後3週目に、骨新生部に存在する骨細胞にLIFの発現が認められ、LIF cDNAの導入により骨芽細胞等を刺激し、その周辺部の骨形成を促進していると推測された。また実験観察中、感染や炎症症状は認められず、H-E染色標本においても炎症所見等見られず、LIF遺伝子、担体として用いたゼラチンスポンジは、周囲組織との親和性も高く、また遺伝子導入効率も、In vivoで有用と考えられた。 以上より、LIF遺伝子導入により、持続的にラット頭蓋骨骨欠損部の骨形成を有効に促進すると考えられた。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Dazai S.,Akita S.,Hirano A.,Fujii,T., et al: "Leukemia inhibitory factor enhances bone formation in calvarial bone defect"J Craniofac Surg. 11. 513-520 (2000)
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[Publications] Hirano A.,Suzuki H.: "Factors related to relapse after Le Fort I maxillary advancement osteotomy in patients with Cleft lip and palate"Cleft Palate-Cran J. 38. 1-10 (2001)
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[Publications] Akita S.,Ishihara H.,Fujii.T, et al: "Leukemia inhibitory factor (LIF) gene improves skin allograft survival in the mouse model"Transplantation. 70. 1026-1031 (2000)
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[Publications] Fujioka M.,Fujii T.,Hirano A.: "Comparative study of mandibular stability after sagittial split osteotomies : Bicortical versus monocortical osteosynthesis"Cleft Palate-Cran J. 37. 551-555 (2000)
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[Publications] Ishiara H.,Hirano A.,Fujii T., et al: "Keloid fibroblasts resist ceramide-induced apoptosis by overexpression of insulin-like growth factor I receptor"J Invest Dermatol. 115. 1065-1071 (2000)
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[Publications] Akita S.,Hirano A.,Fujii T.: "Recurrent, discharging congenital frontotemporal dermoid cyst"Ann Plas Surg. 44. 465-466 (2000)
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[Publications] 藤井徹: "標準形成外科学 第4版"医学書院. 323 (2000)
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[Publications] 藤井徹: "殿部・会陰部の再建と褥瘡の治療 最近の進歩"克誠堂出版株式会社. 207 (2000)