2000 Fiscal Year Annual Research Report
鯨類におけるアメロジェニン遺伝子構造の変遷とエナメル質の多様な表現型との関連
Project/Area Number |
12671789
|
Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
石山 巳喜夫 日本歯科大学, 新潟歯学部, 講師 (70120607)
|
Keywords | 鯨類 / アメロジェニン / 遺伝子 / エナメル質 / 系統発生 / 形成不全症 |
Research Abstract |
鯨類におけるエナメル質の表現型の多様性とアメロジェニン遺伝子との関連を探究する目的で、本年度はヒゲ鯨類2種、歯鯨類6種の核内DNAからのアメロジェニン遺伝子のクローンニングとシークエンスをPCR法により行った。ターゲットは本遺伝子の主要部位である第6エクソンと、その上流部位である第5イントロンである。ヒトのXアメロジェニン遺伝子の塩基配列を基にプライマーを作成し、鯨類の肝臓または筋肉から抽出した核内DNAをテンプレートにしてPCRを行った。結果として、観察対象のすべての種類から増幅産物が得られた。ついで、これらの産物をシークエンスした結果、いずれもヒトのアメロジェニン遺伝子の第5イントロンから第6エクソンの配列に対し85-90%の高い相同性を示したため、これらは鯨類のアメロジェニン遺伝子と同定された。したがって、ヒゲ鯨類は歯を発現していないにもかかわらず、本遺伝子はほぼ完全な状態で存在していることが明らかになり、地質学的年代を越えて保存されていることが明らかになった。遺伝子の塩基配列を詳細に検索した結果、鯨類の遺伝子の第6エクソンはアミノ酸121残基から成り、ヒトや他の哺乳類のものにくらべかなり短いことが明らかになった。また、観察した8種類のうち3種類において、第6エクソンの中央部に停止コドンが存在し、これらの種類においては不完全なアメロジェニン蛋白しか発現していないことが推察された。この現象はヒトのエナメル質形成不全症に相当し、鯨類のエナメル質構造の表現型の一つなっていることが解明された。来年度はさらに種類数を増やし、より詳細で広範囲な検索を試みる予定である。
|