Research Abstract |
高齢者においては,加齢による味蕾の減少や口腔粘膜の萎縮,唾液分泌量の減少などの生理的変化や,各機能の低下,慢性的全身疾患を有する患者の薬物服用による副作用によって,味覚障害,嗅覚障害が生じる.しかし,旨味と四基本味の味覚との関係や,高齢者で見られる加齢変化,機能低下および障害等との関係は,未だ明らかにされていない.そこで,本研究では,旨味と四基本味の味覚との関係を検討し,さらに,高齢者で見られる味覚障害について,客観性を持った診断方法を確立することが目的である. 平成12年度では,高齢者および成人における旨味と味覚に関する基礎的データの収集を行うため,当科外来患者の中から,本研究の趣旨に同意した患者を被験者としてアンケート調査を行った.アンケートは年齢,性別,味覚異常の自覚症状,全身疾患の既往や薬物治療の有無,タバコやアルコールなどの嗜好品,ストレスの有無などについて,予め作成したプロトコールに従って調査を行った.その結果,次のようなことがわかった. 1)高齢者,若年者ともに四基本味のうち,甘味の好きな割合が最も高かった. 2)高齢者は酸味を好む割合が甘味に次いで多く,年齢とともに増加する傾向にあった. 3)高齢者は若年者に比較して塩味を好む割合が少なかった. 4)高齢者,若年者ともに,苦味の好きな割合が最も少なかった. 5)若年者は,塩味,辛味の好きな割合が高かった. 6)味覚異常の自覚のある高齢者は,嗜好の変化や口渇を感じている割合が高かった.
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