2002 Fiscal Year Annual Research Report
金属支台から溶出する金属イオンの歯質透過性及び歯根膜細胞の抗原提示能に関する検索
Project/Area Number |
12671875
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Research Institution | NIIGATA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
魚島 勝美 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (50213400)
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Keywords | 歯科金属アレルギー / 歯科用合金 / 歯質透過性 / 原因除去療法 / 金属製支台装置 |
Research Abstract |
本研究の目的は、直接口腔内に露出していない金属から溶出した金属イオンがどの程度歯質を透過するのかを検索し、臨床における金属アレルギー治療の指針とすることであった。当初は、もし金属イオンが歯質を透過するとしたら、歯根膜細胞や歯髄細胞に抗原提示能があるか否かを検索することも目的としていたが、後述するように金属イオンの歯質透過性は低いことが判明したので、これを重点的に検索した結果、抗原提示能の検索には至らなかった。 今年度は従前の結果を踏まえ、根尖方向への金属イオンの流出を検索するために、2種類の実験を行った。一つは、抜去歯に金属ポストを装着し、生理的食塩水中37℃で半年放置するもの、もう一つは根管充填後にポスト孔を形成し、その中に金属イオンを含む溶液を封入して生理的食塩水中37℃で半年放置するものである。しかしながら、どちらの実験においても、EDSならびにEPMAによっては歯質内に深く滲入するイオンや、根尖より流出するイオンは観察されなかった。 平成12年度、13年度の結果と今年度の結果を総合すると、全体として銀イオンに関しては、象牙質に700μm程度滲入している状況が検出されたが、銅イオンやパラジウムイオンに関しては、象牙質表層のごくわずかの領域を除いてほとんど検出されなかった。銀イオンの象牙質への浸透性は一番高いと考えられる。確かに現段階で、鋳造金属ポストから溶出した金属イオンが歯根表面に到達しないと結論付けることはできない。しかし、少なくともポストから300μm離れた象牙質中では溶出した金属イオンの量がかなり少なく、特に銅イオンやパラジウムイオンに関しては現在の技術では検出することはできないことを考えると、口腔内に露出していない金属を除去するか否かの判断に迷う場合には、そのアレルゲンとしての可能性が非常に低いとの判断で決定しても差し支えないと言えるのではなかろうか。
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