Research Abstract |
運動調節のストラテジーを"予測の関わり"の観点から観察する為,高齢有歯顎群(平均72歳,5名),高齢総義歯装着群(65歳,3名),青年有歯顎群(25歳,9名),青年有歯顎同時2課題負荷群(24歳,9名)に対し,最頻値1.3Hzランダム音信号負荷下顎タッピング運動を行わせた.同時2課題群については下顎タッピングと同時にパソコン画面上の一定間隔をおいて現れる単語を覚えるよう指示した.音信号負荷下顎タッピング運動時のMKG vertical,咬筋表面筋電図,音司令信号を同時記録し,以下の結果を得た.1.同時2課題群の過剰タッピング出現率は,1.3Hzの連続程度に関係なく,1.3Hz×2の音信号後で著しく少なかった.また,同群の開口距離は小さい傾向にあった.2.1.3Hz×2の音信号後における過剰タッピングは,直前信号からほぼ1.3Hz後の時点で生じており,ある程度課題が進行してから出現し始めていた.3.直前信号から1.3Hz後の予測音時点〜過剰タッピングMm burst onsetの時間差は,1.3Hzに後続する過剰タッピングで平均値が小さく,音信号を確認前にMmの放電が始まっている様子が窺えるが,1.3Hz×2音信号に後続して発生した過剰タッピングについては,平均値が大きく,特に両高齢者群において,ほぼ音信号を確認してから放電を始めていることが窺えた.4.開口距離は,同時2課題群以外,1.3Hzの連続が多いほど大きくなる傾向がみられた.5.以上より,次のことが推測された.同時2課題群では,第2課題は注意散乱条件としてではなく覚醒条件として働いている.最もよく現れる頻度が記憶され易く,過剰タッピングもその周期で出現することが多い.完全な過剰タッピングは両高齢者群で多く見られ,不完全過剰タッピングは青年群で多く見られる傾向にあるが,これは,運動時の"予測"への依存の強さによるものである.
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