2002 Fiscal Year Annual Research Report
メチレンビスホスホナートへの求電子剤付加を基盤とする高効率骨格構築不斉反応の開発
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12672053
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
長岡 康夫 関西大学, 工学部, 助教授 (90243039)
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Keywords | アルケニルホスホナート / アレン / 不斉ホスフィン配位子 / 共役付加反応 / 共役還元反応 / ビニルアニオン / ヒストン脱アセチル化酵素 / HDAC |
Research Abstract |
本研究の目的はメチレンビスホスホナートを基盤とする炭素-炭素結合形成反応の開発である。私はすでにα,β-不飽和アルケニルホスホナート(メチレンホスホナート)のLDA処理により生じるα位ビニルアニオンが非常に活性の高い求核剤となり、アルデヒドやケトンと反応してベイリスーヒルマン型の付加体を形成することを明らかにしている。この付加体はβ-ヒドロキシアルケニルホスホナートであり、適当な塩基処理によってアレンに変換できる。さらにビスアルケニルホスホナートをLDA処理すると前述のα位ビニルアニオンが分子内のマイケル受容体であるもう一方のアルケニルホスホナートに即座に捕捉されることにより環化体が効率良く生成することを明らかにしている。この反応を応用して、有効なキラルホスフィンリガンドの合成に成功した。 私は現在、抗がん剤の探索研究を行っている。その過程で腫瘍増殖抑制活性を有する、一連のヒドロキサム酸誘導体の開発に成功した。本化合物の作用機序はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害活性によるアポトーシスの誘導である。これは直接DNAに作用する従来型の抗がん剤とは異なり、骨髄抑制等の重篤な副作用の回避が期待できる。標的となるHDACは亜鉛を活性中心に有する加水分解酵素であり、アセチル化されたヒストンタンパクの脱アセチル化を触媒する。HDACはアセチル化リジンの加水分解の遷移状態を安定化する。したがって亜鉛に配位したアセタール中間体と同様に1,1-diol構造を有するホスホナートもこの遷移状態アナログとしてHDACに認識される事が期待される。そこで、本研究において開発したホスホナートを基盤とする炭素-炭素結合形成反応を応用して、ホスホナートを活性中心認識部として有する、一連の新規HDAC阻害剤をデザインし、合成することに成功した。現在、本化合物群のHDAC阻害活性と、がん細胞増殖抑制活性を検討中である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Y.Nagaoka, H.Inoue, K.Tomioka: "Allenes Through Horner-Wadsworth-Emmons Olefination of Alkenylphosphonates"Phosphorous, Sulfur and Silicon and The Related Elements. 177・6-7. 1843-1846 (2002)
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[Publications] S.Uesato, M.Kitagawa, Y.Nagaoka, T.Maeda, H.Kuwajima, T.Yamori: "Novel Histone Deacetylase Inhibitors : N-Hydroxycarboxamids Possessing a Terminal Bicyclic Aryl Group"Bioorg. Med. Chem. Lett.. 12・10. 1347-1349 (2002)
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[Publications] Y.Nagaoka, N.EI-Koussi, S.Uesato, K.Tomioka: "Conjugate reduction-initiated tandem cyclization of a chiral α,β,χ,Ψ-unsaturated bisphphine oxide"Tetrahedron Lett.. 43・24. 4355-4359 (2002)
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[Publications] H.Inoue, Y.Nagaoka, K.Tomioka: "A New Methodology for Synthesis of A Chiral Phosphinocarboxylic Acid Through Micael Cyclization-Aldol Tandem Reaction of Chiral α,β,χ,Ψ-Unsaturated Bisphosphine Oxide and Application in Palladium-Catalyzed Asymmetric Allylic Alkylation"J. Org. Chem.. 67・16. 5864-5867 (2002)
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[Publications] K.Asami, T.Okazaki, Y.Nagai, Y.Nagaoka: "Modification of alamethicin ion channels by substitution of Glu-7 for Gln-7"Biophys. J.. 83. 219-228 (2002)