2001 Fiscal Year Annual Research Report
銅イオンによるタンパク質の折りたたみ制御と神経変性疾患の関係
Project/Area Number |
12672084
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 隆史 東北大学, 大学院・薬学研究科, 講師 (30222318)
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Keywords | 神経変性疾患 / アルツハイマー病 / 金属 / 鉄 / チロシン / ラマン分光法 |
Research Abstract |
アミロイドβ(Aβ)と金属イオンの相互作用は、アルツハイマー病の原因となるアミロイド線維形成において主要な役割を持つと考えられ、特に、Zn(II)とFe(III)はAβを凝集させる強い効果を持つことが知られている。本研究者は、Zn(II), Cu(II)による凝集の際に、アミノ末端領域の3個のヒスチジン(His)残基がAβの主要な金属結合部位となることを昨年度までに見出している。13年度は、Aβに1残基のみ含まれるチロシン(Tyr10)が、Fe(III),Zn(II)によるAβの分子間会合に関与する可能性を検討した。 AβにFe(III)イオンを添加すると褐色の沈殿を生じた。上清と沈殿を分離した後、各々の514.5nm励起ラマンスペクトルを測定したところ、沈殿からは金属と結合したチロシネート(Tyr^-)のスペクトルが得られた。このスペクトルは、可視領域のTyr^-→Fe電荷移動吸収に共鳴することによりTyr^-の散乱強度が顕著に増大したものである。一方、上清から得られたスペクトルにはTyr^-の共鳴ラマンバンドと他のペプチド部分の非共鳴ラマンバンドが共に観測された。このスペクトルの解析から、3個のHisはFe(III)と結合していないことが明らかとなり、Fe(III)の主な結合部位はTyr10のフェノール酸素であることが示された。これに対して、Zn(II)のTyrへの結合は大過剰なZn(II)の存在下で生じる凝集固体中においてのみ形成されることから、Zn(II)によるAβ凝集の主な原因ではないと考えられる。 以上の結果から、Fe(III)イオンによるAβ凝集にはTyr10が特に重要な役割を演じていると考えられる。Aβに結合した鉄イオンの酸化還元反応は活性酸素種の生成に繋がり、神経細胞の脱落を引き起こすと考えられている。神経毒性発現の観点からもTyr10の役割が注目される。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Takashi Miura, Chiaki Yamamiya Miho Sasaki, et al.: "Binding mode of Congo Red to Alzheimer's amyloid β-peptide studied by Raman spectroscopy"Journal of Raman Spectroscopy. (in press). (2002)
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[Publications] Takashi Miura, Kiyoko Suzuki & Hideo Takeuchi: "Binding of Iron(III) to the Single Tyrosine Residue of Amyloid β-peptide Probed by Raman Spectroscopy"Journal of Molecular Structure. 598(1). 79-84 (2001)
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[Publications] Takashi Miura, Kiyoko Suzuki & Hideo Takeuchi: "Inhibitory Effect of Copper(II) on Zinc(II)-Induced Aggregation of Amyloid β-Peptide"Biochemica Biophysica Research Communications. 285(4). 991-996 (2001)