2000 Fiscal Year Annual Research Report
脂溶性ホルモンによるクロマチン構造変換の分子メカニズムの解析
Project/Area Number |
12672108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳澤 純 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (50301114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 茂明 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (60204468)
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Keywords | クロマチン / 転写 / エストロゲンレセプター |
Research Abstract |
低分子脂溶性物質をリガンドとするリガンド誘導性転写因子である核内レセプターは、リガンド未結合時にはN-CoR/SMRTなどを含むヒストン脱アセチル化酵素複合体と結合することにより転写活性を抑制し、またリガンド結合時にはp300/p160蛋白質といったヒストンアセチル化酵素と結合することにより転写を活性化することが明らかとなっている。DNAはヒストン蛋白質と相互作用し、クロマチンと呼ばれるよりコンパクトな構造体を形成して核内に存在している。これらヒストンアセチル化、脱アセチル化酵素複合体はヒストンを修飾することによりクロマチン構造を変換することによって転写を制御しているものと考えられる。 われわれは、新規ヒストン修飾蛋白質複合体を検索するため、核内レセプターファミリーに属するエストロゲンレセプター(ER)を用いてカラムを作製し、HeLa細胞核抽出液よりリガンド依存的にERに結合する蛋白質複合体を精製した。精製した蛋白質をSDS-PAGEにて分離しプロテアーゼを用いて分解した後、質量分析機にてペプチドの質量を決定しデータベースと比較することにより同定した。その結果、基本転写に関与すると考えられていたヒストンアセチル化複合体であるGCN5/TRRAP複合体がリガンド依存的にERに結合することが明らかとなった。免疫共沈降実験から、この複合体は細胞内においてもERと結合することが示された。TRRAP/GCN5を細胞内に発現させたところ、ERの転写活性を促進することが明らかとなった。また、TRRAPのアンチセンスRNAはERの転写活性を抑制すること、さらに乳癌由来の細胞株であるMCF7にアンチセンスRNAを導入したところ、エストロゲン依存的な細胞増殖を強く抑制した。これらの結果から、われわれは、TRRAP/GCN5がヒストンのアセチル化を介してERの転写を制御しているものと考え解析を進めている。
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[Publications] Watanabe.M.,Yanagiswa J et al: "A subfamily of RNA binding DEAD-box proteins acts as an estrogen receptor α coactivator through the AF-1 with an RNA coactivator SRA"EMBO Journal. 20. (2001)
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[Publications] Kato.S.,Yanagisawa J. et.al.: "Molecular mechanism of a cross talk between oestrgen and growth factor signalling pathways"Genes to Cells. 5. 593-601 (2000)
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[Publications] Kobayashi,Y.,Yanagisawa J. et al.: "P300 mediates functional synergism between AF1 and AF2 of estrogen receptor α and β by interacting directly with the N-Terminal NBdomains."Journal of Biological Chemistry. 275. 15645-15651 (2000)
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[Publications] 柳澤純 他: "TGFβとビタシンDシクナル伝達機構の共通性"臨床免疫. 34. 83-90 (2000)
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[Publications] 柳澤純 他: "性ステロイドレセプターによる転写制御の分子メカニズム"遺伝子医学. 4. 165-169 (2000)
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[Publications] 柳澤純 他: "リガンド依存的な核内レセプター転写制御の分子メカニズム"実験医学. 18. 229-234 (2000)