2001 Fiscal Year Annual Research Report
医療者・患者間コミュニケーションの医事粉争に及ぼす影響に関する基礎的研究
Project/Area Number |
12672191
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
萩原 明人 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (50291521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 弘 大阪府立看護大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (70269843)
信友 浩一 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (90037424)
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Keywords | 医療コミュニケーション / 紛争 / 説明と理解 / 医師 / 患者 |
Research Abstract |
近年わが国では医療訴訟が増加傾向にあり、ハインリッヒの法則によれば、毎年約2万件の医事紛争が発生していると推計される。従って、医事紛争の防止は喫緊の課題である。ところで、医療訴訟を提起した患者や家族を対象にした欧米の先行研究によれば、医療者と患者間のコミュニケーション不良が医事紛争の原因であることを強く示唆している。 そこで、本年度は、福岡県内の内科医と患者を1対1のペアにして、医療者・患者間のコミュニケーション状態、医事紛争の原因となりうるコミュニケーション上の問題、患者の医療満足度等を把握し、医療者・患者間コミュニケーションが医事紛争の発生(防止)に及ぼす影響や程度を定量的に評価した。また、治療行為に関する説明と理解に関し、医師と患者間でその認識のズレを定量的に評価した。その結果、以下の知見を得た。 (1)治療行為の説明に関しては、医師が、検査や治療の一部について、患者に対する説明が足りないと感じている場合には、患者も同様に感じている。 (2)治療効果や治療の副作用・危険性については、医師自身が、説明が足りないと感じている場合には、患者も説明の内容を理解出来ていない。 (3)医事紛争に巻き込まれた患者や家族が共通して指摘する17項目のコミュニケーション状態のうち、15項目で、医師による治療行為の説明、患者の理解、あるいは治療における患者意思の反映が有意に関連していた。 本研究ではコミュニケーションの改善によって医事紛争を未然に防止するという発想に基づき、医師・患者間のコミュニケーション状態と医事紛争の要因との関係を定量的に検討した。そして、本研究から得られたこれらの知見は、医療者・患者間のコミュニケーション改善のために即時に応用することが出来るだけでなく、医事紛争の未然防止に役立てることが出来ので、極めて有益性の高いと考えられる。しかし、ここで紹介した知見の中には詳細な検討を要する点もあり、更なる研究が必要あると考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 荻原明人: "医療者・患者間コミュニケーションの医事紛争に及ぼす影響に関する文献的考察"福岡医学会雑誌. (印刷中).
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[Publications] 荻原明人: "医療者と患者のコミュニケーション"教育と医学. 49(7). 57-65 (2001)
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[Publications] 萩原明人: "健康支援学入門"北大路書房. 10 (2001)