2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12672193
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
上村 隆元 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10232795)
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Keywords | EBM / 産業保健 / 医療経済 / 便益 / 効果 / 効用 |
Research Abstract |
【目的】産業保健施策の効果を、医療経済的側面、QOLの側面、健康効用値増加など様々な角度から評価することにより、どのようにプログラムを行えば効率的であるかを判断できるEvidence(根拠)を求める。 【対象及び方法】先行研究である産業保健施策の医療経済学的評価へのアプローチの際フィールド調査で得られた企業の産業保健施策の体制と費用のデータに加え、QOL(Quality of Life)や健康効用値などを評価の基準とする手法を用いる。これらを元に産業保健施策(プログラム)に対する評価のスタンダードを費用効果分析、費用便益分析、費用効用分析をもとに示す。今年度は都内に本社を持つ2つの大企業を対象に自己回答式質問票(HUI3;Health Utilities Index3)により、健康効用値の測定を行った。更に産業保健にかける両社の費用を調査した。 【結果および考察】調査対象企業はそれぞれ金融系と運輸系従業員であり、職種特性は自己裁量権や交代制勤務形態、給与形態に関して異なる。従業員1人当たり年間産業保健費用も差がある。A社従業員1552名(38.8±12.3歳)、B社従業員1296名(42.5±9.4歳)を対象にQOLに影響を与えると思われる個人属性因子(性別、年収、職域人間関係、罹患している慢性疾患数)を調整して、HUI3多属性健康効用値を被説明変数とした線形回帰分析の結果、両社で健康効用値に差が見られた。労働衛生や産業保健プログラムを医療施策と考えた場合、それが労働者の健康増進もたらすことは充分思料される事であるが、一体企業便益(Benefit)増進にどれほど寄与するのか、あるいは投下費用(Cost)に対する投資効果がどれだけあるのかなど客観的分析結果に関する実証研究は乏しく、その手法さえ確立されていないのが現状である。これは産業保健活動が企業にとっての余力範囲で行なう福利厚生のひとつで採算部門と捉えられず、法準拠型の達成度が評価基準に代替されてきたことによるものだろう。本研究では更に費用と産業保健施策体制との相関を調べ、より実証的なEvidence(根拠)を示すことを来年度以降の研究計画に加味している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 上村隆元 ら: "産業保健の費用と便益第一報"産業衛生学雑誌. 40-1. 252 (1998)
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[Publications] 上村隆元 ら: "産業保健の費用と便益第二報"産業衛生学雑誌. 41-1. D315 (1999)
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[Publications] 上村隆元 ら: "産業保健の費用と便益第三報"産業衛生学雑誌. 42-1. 583 (2000)
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[Publications] 上村隆元 ら: "HUI3(Health Utilities Index 3)を用いた職域における健康効用値測定の試み"産業衛生学雑誌. 43-1. (2001)