Research Abstract |
平成13年度は,以下の調査研究を行った。 1)患者情報の共有のための国際標準化の動向を調査するためにMedinfo2001(London)の国際看護ミニマムデータセット(i-NMDSプロジェクト)に関するワークショップ,および,国際看護実践分類(ICNP)のワークショップに参加した。そこで,NMDS構築においてデータ収集時の個人識別情報の秘匿化が課題の一つとなっていること,ICNPについては,欧米,韓国,台湾など世界20ヶ国以上で,すでに実用化に向けた検討に入っており,情報共有のための共通言語構築への取り組みに関するわが国の遅れ等が明らかになった。また,インタビュー調査の中から,薬局から病院への処方情報の問い合わせなど,施設間での患者情報の共有において,患者へのインフォームド・コンセントが制度化されている国があることなどが明らかになった。 2)わが国の病棟看護師が患者のプライバシーをどのように捉え,患者に関する個人情報を看護師間でどのように共有しているかを調査するため,N県内のある病院で看護師179名を対象とする質問紙調査を行った(回収率79%)。その結果,看護に直接関係する患者情報については,看護師自身の個人情報と比較して患者の個人情報のプライバシー性を低く捉える一方で,学歴,勤務先等の社会性の強い情報については,むしろ患者情報のプライバシー性を高く捉えている傾向が明らかになった。さらに,患者情報の看護師間での共有については,看護データベースに一般的に記載される病名,年齢,住所のような情報は,病棟の全看護師によって共有し,治療,看護に必要だと考える情報については,そめ患者にかかわるチームで,そして,悩み事や打ち明け話のようなプライバシー性の高い情報については,共有する相手を限定する傾向があるなど,情報共有の実態と共有範囲の制限の理由の一端が明らかになった。
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