2001 Fiscal Year Annual Research Report
生産技術の歴史的展開過程に関する技術史的視点からの構造分析
Project/Area Number |
12680005
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐野 正博 明治大学, 経営学部, 教授 (70206001)
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Keywords | 技術史 / 生産技術 / 製粉技術 / 動力水車技術 / 技術論 |
Research Abstract |
生産技術の歴史的展開過程に関する技術史的視点からの構造分析のための基礎的作業として道具と機械の区別規定および技術それ自体の規定に関する先行研究の再検討を引き続きおこなうとともに、有用物の目的意識的形成過程としての生産過程を、「動力」「伝達」「作業」「制御」という四つの技術的要素から構成されるプロセスとして捉える視点から現実の生産技術の歴史的発展過程に関する構造分析をおこなった。 それにより、まず製粉技術の歴史的発達構造に関して、粒を粉にする製粉「作業」それ自体を直接的に担っている道具や装置の技術的改良プロセス(「石」→「杵と臼」→「サドル・ストーン」→「挽き石臼」→「回転石臼」)、製粉作業を行うための「動力」供給源の技術的改良プロセス(人間→家畜→横型水車→縦型水車)、動力「制御」されたエネルギー源としての流水を水車へ給水する機構の技術的改良プロセス(斜水溝、流水路、水門、水道、貯水池、ダムなど)、水車の動力部で生成された回転運動エネルギーという動力を作業部である回転石臼へと「伝達」する機構の相対的独立(歯車機構の成立)という四つの技術的要素の相互連関という視点から分析可能なことを明らかにした。 また、動力水車技術と揚水車技術の連関に関して、その技術的構造の側面からの分析を行い、水車という技術的構造により流水の運動エネルギーや位置エネルギーを動力へと変換する機構としての動力水車は、水車という技術的構造により水を汲み上げる揚水車と技術的には密接な関連を持っていることから、動力水車の歴史的形成に関して大きな影響を及ぼした可能性が高いことを、初期の縦型動力水車の動力伝達機構が畜力揚水車(サキヤ水車)の動力伝達機構の構造的類似性などから明らかにした。 そしてまた揚水車はその技術的構造から足踏み式人力揚水車→水力揚水車(ノーリア水車)と、畜力揚水車(サキヤ水車)の二系統に分けることができること、および、そうした二系統の揚水車技術をルーツとして縦型動力水車が歴史的に形成された可能性が高いことを明らかにした。
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