2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12680015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深代 千之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (50181235)
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Keywords | 身体運動 / シミュレーション / 筋・腱複合体 / 運動制御 |
Research Abstract |
身体運動は、自分の意志で運動を始めようとする「自律制御」と、いったん運動が始まったら、他の器官などに同調される「引き込み現象」から構築されている。運動を制御するこれらの仕組みを明らかにするためには、その基礎づくりとして身体運動のメカニズムを様々な方向から検討しておかなければならない。 本年は、収縮要素と並列・直列弾性要素からなるHillタイプの筋・腱複合体モデル(Muscle-tendon complex : MTC)を作成し、その力学的特徴をシミュレーションした。すなわち、筋と腱の長さ比および負荷重量を変えて収縮要素を最大活動させたところ、腱の長いMTCでは軽い負荷の時に、筋の長いMTCでは重い負荷の時に、相対的に大きな仕事がなされることがわかった。一方、身体の中の体幹(例えば大殿筋)では筋が長いMTC、末端(例えば下腿三頭筋)では腱が長いMTCが配列されていることが、解剖学的にわかっている。シミュレーション結果と身体に配置されているMTCとを対比して考えると、大きな負荷で仕事をする体幹では筋が長く、軽い負荷で仕事をする末端では腱(例えばアキレス腱)が長いというように、MTCの身体配列は誠に理にかなっていることが実証された。 このHillタイプのMTCモデルを身体骨格モデルにとりつけ、立位の連続足関節屈伸運動、反動を用いた垂直跳、歩行のシミュレーションを行い、成功した。動作を遂行させるためには、MTCモデルの収縮要素への神経入力つまり脳からの命令をコントロールしてシミュレーションする。シミュレーションにおける筋活動レベルと、実験的に調べた筋電図はかなりよく一致し、MTCモデルとシミュレーションの妥当性が確認された。このモデルを用い、神経入力を様々に変化させて動作を作成するという手順を通して、脳の高次機能に接近するという土台ができあがったといえる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Nagano, A., Komura, T., Himeno, R., Fukashiro, S: "Optimal digital filter cutoff frequency of jumnping kinematics evaluated through computer simulation"Int.J.Sport Health Sci.. 1(2). 196-201 (2003)
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[Publications] Nagano, A., Komura, T., Fukashiro, S.: "Contribution of series elasticity in human cyclic heel-raise exercise"Journal of Applied Biomechanics. 19. 340-352 (2003)
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[Publications] Nagano, A., Komura, T., Fukashiro, S.: "Effects of series elasticity of muscle tendon complex on an explosive activity performance with a counter movement"Journal of Applied Biomechanics. 20(1). 85-94 (2004)
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[Publications] Kawamoto, R., Y.Ishige, K.Watarai, S.Fukashiro: "Quantitative investigation of torsional loading of the tibia during quick change of running direction"Int.J.Sport Health Sci.. 1(1). 24-33 (2003)
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[Publications] 長野明紀, 深代千之: "Hill型筋腱複合体のモデリングとコンピュータ・シミュレーションへの適用"Jpn.J.Sports Sci.Exerc.. 7(3). 225-237 (2003)
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[Publications] 深代千之, 右近睦美, 安部 孝, 川本和久: "陸上:短距離選手における足関節の弾性特性"スポーツ医・科学. 14・15. 21-24 (2002)
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[Publications] 深代千之: "なぜなぜ宇宙と生命:スポーツは重力との戦い"学術会議業書6. 79-90 (2003)