Research Abstract |
本年度は動作と認識の変化を縦断的に検討するため,大学生男女の初心者を抽出し,動作と認識アンケート,泳フォーム,水中での壁を蹴る力を指導前後に測定,解析し,その変容を検討した.また,比較の対象として,中級者,上級者も同様に測定,解析し,トータルに横断的および縦断的な検討をすることにした.結果は以下のようにまとめることができた. 男女初心者のけのび動作に対する認識は,約1週間のトレーニングでは「わかる」けど「できない」から「わかる」し「できる」へと変容することが伺われた.しかし,女子は男子に比べ,その変容の割合が小さく,過小評価する傾向があった.画像解析および水中フォースプレートによる力発揮の様相からは,重心移動軌跡がpreよりpostの方が水面より深い位置に変化した被験者はけのびの到達距離が長くなる傾向にあることがわかった.しかし,男女差,個人差などは見受けられなかった.すなわち,この程度のトレーニング期間ではその効果が顕著に現れないことを意味しているものと考えられる.また,力積とけのびの到達距離との関係は,初心者から中級者,上級者へと技能が上達するに従って統計的に有意な相関がみられ,習熟の度合いによってこの関係性が幾分変化していく様相を捉えることができた.また,重心移動速度の減速量,すなわち,カベを蹴ってから0.5秒後までの速度変化を検討した結果,この間の姿勢の取り方如何によって減速量が左右されることが初心者にも確認された.このことから,カベを蹴る力の大きさが必ずしもけのびの到達距離に反映されるわけではなく,むしろ少ない力で,できるだけ抵抗のない姿勢を作り,適切な初速(秒速2.5m/s付近)を保って,徐々に蹴り出すことが「けのび」のコツであることが示唆された.一方,上級者では力積の大きさが初速度の大きさ,0.5秒後の重心移動速度の大きさ,到達距離の大きさに直接結びつくことが明らかになった.しかし,女子は男子に比べ,体脂肪率が大きいことから,浮き上がり後の移動距離に性差が出ることも示唆された.
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