2000 Fiscal Year Annual Research Report
土佐「宮相撲」に関する歴史社会学的研究-村落共同体のなかでの機能をみる-
Project/Area Number |
12680040
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西村 秀樹 九州大学, 健康科学センター, 助教授 (90180645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 泰治 高知女子大学, 文化学部, 講師 (00225096)
岡田 守方 高知大学, 教育学部, 助教授 (60160686)
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Keywords | 宮相撲 / 「前相撲」 / 「お好み三番勝負」 / 「五人抜き」 / 「ローカリズム」 / 「勧進元預り」 / 対外的調和機能 |
Research Abstract |
戦前から嶺北地域でおこなわれていた相撲大会として、土佐町では田井の中嶋観音の十七夜祭、森の野中兼山祭、相川の納涼祭、宮古野白髪神社の中日祭、地蔵寺地蔵堂の夜相撲、峯石原の高峯神社大祭、本山町では東光寺十七夜祭、上関阿弥陀堂の夜相撲、吉野の三倉神社、白髪神社が確認できた。本山町では、上関阿弥陀堂以外は廃れてしまったが、土佐町ではほとんどが現在も続けられている。これらの宮相撲についての聞きとり調査をまとめると、以下の三点になる。 (1)大会の運営資金は、地区の総代が集めた寄付金による。当日に向けての練習指導も、土俵づくり、桟敷づくりもすべて地区総ぐるみでなされる。戦前も現在も、行政の側とは無関係に、地区の熱意によって脈々と続けられている"フォーク・ゲーム"なのである。社会体育とかコミュニティ・スポーツの原点として見直すべき姿であろう。 (2)相撲大会の実施方法は、現在のようにストレートに勝者を決める方法(例えばトーナメント)ではなかった。まず、「前相撲」といって、自主的な登場方法で取組がなされる。それを「四方柱」(審判)が総合判断して、好取組となりそうな「お好み三番勝負」を設ける。同一取組が三本勝負でなされるのである。次には、「四方柱」によって、出場力士の実力がランクづけされ、甲、乙、丙組に分けられ、それぞれにおいて飛びつき「五人抜き」(間髪入れず次々とおこなう五人抜き)がなされる。すなわち、取組の勝負の過程、取組のおもしろさをじっくり味わうというやり方であった。 (3)強い力士にはひいき連中、すなわち地縁・血縁を媒介とした後援会によって「しこ名」がつけられ、また化粧まわしが贈られた。ひいき連中は熱烈な応援を繰り広げ、喧嘩沙汰になることもたびたびあった。ここには、各集落の「ローカリズム」といったものがうかがえる。しかし、そうした緊張を緩和させる村落間の対外的調和機能をも宮相撲は有していた。「勧進元預り」といった勝負を引き分けにする裁定があったこと、大会には出店が並び、各集落の特産物が集められ、集落間の交流がなされたこと、集落を越えての男女交際・婚姻の契機となったことなどは、そうした意味をもっている。
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