Research Abstract |
平成13年度は,平成12年度で開発した高齢者版転倒セルフエフィカシー尺度の妥当性をさらに調べるために,日常生活における高齢者の身体不安定性感との関係を探った.まず,日常生活における高齢者の身体安定性感尺度を開発した.予備調査では,軽費老人ホームに居住する24名の高齢者を対象に面接調査を行った.その内容は,彼らの日常生活の活動中に起こる身体の不安定感および転倒しそうになる状況および事象であり,それらの回答内容を基に20項目からなる尺度を作成した.尺度の作成では,これら20項目から成る尺度を地域および軽費老人ホームに居住する151名の高齢者を対象に行わせ,各項目について検討を行った.その結果,妥当と思われる13項目からなる身体安定性尺度を完成させた.信頼性の検討では,内部一貫性(α=.92)および検査・再検査法(r=.70)による検討を行った結果,高い信頼性が確認された.また,妥当性の検討では,この尺度の妥当性の確認のために,高齢者に,重心動揺,10m歩行および30cmの障害物またぎ越し動作を行わせ,その際の各指標と身体安定性尺度の点数との関係を見た.その結果,身体安定性尺度得点と重心動揺計の静的バランスの間に関係は見られなかったが,歩行においてはストライド幅(r=.41)および歩行速度(r=.44)との間に,さらにまたぎ越し動作では3つのストライド距離変数(rs=.27,.25,.30)との間に有意な相関係数が得られた.また,過去一年間に転倒を経験しなかった者は,経験した者と比べて,有意に大きな身体安定性尺度得点を示した.加えて,転倒恐怖が少ない者は,大きな者と比べて,有意に大きな身体安定性尺度得点を示した.このように開発した身体安定性尺度と転倒セルフエフィカシー尺度の関係を見たところ,日常生活において身体が不安定であると感じている高齢者は,転倒セルフエフィカシー得点も低いことがわかった.これら2つの尺度は,将来,転倒しやすい高齢者をスクリーニングしたり,転倒予防プログラムの効果の評価として使用される可能性がある.
|