Research Abstract |
本研究の目的は,わが国の近代化過程において,都市の交通基盤がいかに整備され,その効果が地域発展にどのような影響を与えたか,つまり交通基盤整備と地域発展の相互関係を明らかにする点にある。対象地域は明治22年(1889)に市制を施行した名古屋市及びその周辺地域であり,鉄道・電車の開業,道路の建設・改修,港湾・運河の建設,自動車・バス交通の導入といった一連の交通基盤整備が,都市の地域発展をどのように支えたかに注目する。本年度は,明治期から戦前昭和期までに行われた交通基盤の整備事業に関する原資料の収集を行った。名古屋市の市政資料館に収集されている各種の資料をはじめとして,名古屋商工会議所の図書館,名古屋市博物館,東京にある交通博物館,東京市政調査会図書館などで原資料の複写を行った。また,交通事業や企業活動の歴史を知るため,資料の購入および複写を行った。つぎに,それらの資料をもとに,明治初期から順に交通基盤整備がどのように展開されていったか,その概略を明らかにした。鉄道の導入からはじまり,港湾の建設,運河の開削,自動車交通の開始が次々に行われ,近世までの地域構造が大きく変化をしていく過程が明らかになった。この間,戦争や経済の好不況など,交通基盤整備を左右する出来事が起こり,そのたびに整備事業は影響を受けていった。それゆえ,今後はさらに,交通基盤の整備がどのような時代背景のもとでなされたか,その結果,産業,社会にいかなる影響を与えたかという点を中心に研究を行う予定である。
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