2001 Fiscal Year Annual Research Report
高校工業教育の教育内容に対する工業に従事している卒業者の評価に関する事例研究
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12680186
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
長谷川 雅康 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (00253857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三田 純義 小山工業高等専門学校, 助教授 (50280350)
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Keywords | 高校工業教育 / 実験・実習 / 専門性 / 技能 / 段取り / 製図 |
Research Abstract |
本研究は、高校工業学科を卒業し、現在産業界で工業技術にかかわる人々が、高校工業学科で受けた教育内容とくに工業教科の内容をどのように評価しているかを追跡調査する。この調査結果を踏まえ、目的意識の明確な生徒に専門性の高い工業教育を行うための教育課程開発の基礎データを得ることを目的とする。 今年度は、調査対象として大阪市立都島工業高等学校と大阪府立今宮工業高等学校の二校を選んだ。両校とも大阪にあって永い歴史を持ち、それぞれ特色のある工業高校であり、同窓会組織も確立している。前者は「学理・実験重視型」の特徴を、後者は「製図・実習型」の特徴を戦前からもって、今日に至っている。 調査は、(1)調査対象年度・学科の確定(2)調査項目の検討・確定(3)調査票の郵送(4)調査票の回収(6)調査票の集計・分析の手順で行った。調査対象は、昭和35・39・44・48・53・57・61・63年3月卒業者とし、都島工高は機械・電気・工業化学・建築・土木・機械電気の6学科卒業生(2101名)、今宮工高は機械・電気・建築の3学科卒業生(1742名)を選択した。回答は前者が435名(20.7%)、後者が367名(21.1%)であった。 集計の結果、両校ともかなり類似した傾向がみられた。すなわち、、(1)卒業後すぐ就職が90%前後。進学後就職が10%前後。(2)就職後についた仕事では、「技術的デスクワーク」が最も多く65%-72%。(3)仕事の内容と高校での専門教育との関連については、「専門教育を受けたことが役立つ仕事」「専門教育を受けなかったらできない仕事」「専門教育を受けなかったらかなり苦労する仕事」の順で80%以上が関連した仕事に就いている。(4)仕事への高校専門科目の有用性の評価は、「専門科目で学んだ理論の基礎」「専門科目で学んだ実際的技術的知識」「製図で習得した技能、技術的知識」「実験・実習で習得した技能」がとくに高い評価を得ている。ただし、学科による相違も相当みられる。(5)社会生活への高校教育の影響:「具体的な体験を通じて、関連分野の技術的なイメージが構成しやすくなった」「15歳からの技術・技能教育によって技術的なセンスが身に付いた」などを高く評価。(6)今後の工業教育に対しては、教育課程について「専門教育をもっと充実して行う」「生徒の選択できる幅を増やす」など、教科内容について「体験を通して学べる実験や実習」「課題研究による課題解決能力」「情報技術」などを求めている。総じて、工業教育への評価はかなり高いと考えられる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 長谷川 雅康, 加藤 正基: "高校工業教育の教育内容に対する工業に従事している卒業者の評価II-大阪市立都島工業高等学校の事例-"技術史教育学会研究発表講演論文集. 2001年度版. 25-27 (2001)
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[Publications] 長谷川雅康, 三田純義, 佐藤史人: "高校工業教育の教育内容に対する工業に従事している卒業者の評価I-東京工業大学工学部附属工業高等学校の事例-"鹿児島大学教育学部研究紀要(教育科学編). 第53号. 85-101 (2002)