Research Abstract |
本研究は,集合演算のアルゴリズムにおける基礎的問題の一つである選択問題に対して,ゲーム木の探索アルゴリズムを応用することにより,計算量に関する新しい理論的結果を求めるものである.研究対象として特に並列選択問題をとりあげる.本年度は,昨年度に引続き,集合を2つに分割する基本問題に対して,並列比較回数に関する一般的な上界式,下界式,正確な値の導出を試みるとともに,小さいサイズの問題に対する正確な値を決定する計算を行った.本研究で開発した探索プログラムを応用して,次の2つの並列比較問題の計算量を調べた.要素数をnとして,V(n, t)とW(n, t)によってそれぞれ第t位の要素,整列した上位t個の要素を求める並列比較回数とする. 上記の基本問題の並列比較回数は, 分割する上位の個数をtとしてU(n, t)で表す. 逐次計算に対するU, V, Wの研究結果は,D. E., Knuth(The Art of Computer Programming, V_ol. 3, 1998)が詳しい.本研究はKnuthにならい,並列計算に対するU, V, Wを調べるが,本年度はUのほかVとWに対して,小さいnに対する正確な値を決定する計算を行った.表の項目のそれぞれの計算には長時間を要し,探索アルゴリズムの能率向上などの工夫を行った.この結果から判ったこととして,小さいtに対する値は,本研究のUとM. Aigner(1982)のWの一般的な上界式が与える値によく一致するが,UとWともに,その間のVも,5以上のtに対してかなり差がある.このことは一般のnとtに対して良い上界式が見つかる可能性が大きく,来年度の課題となる.
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