Research Abstract |
本研究は,集合演算のアルゴリズムにおける基礎的問題の一つである選択問題に対して,ゲーム木の探索アルゴリズムを応用することにより,計算量に関する新しい理論的結果を求めるものである.研究対象として特に並列選択問題をとりあげる.本年度は,昨年度に引続き,基本的な3つの課題に対して,並列比較回数に関する理論および実験の研究を行なう.ここで,3つの課題とは,要素数nに対して,上位t個の集合への分割,第t位の要素の選択,上位t個の整列をそれぞれ求めるための必要十分な並列比較回数U(n, t),V(n, t),W(n, t)を調べることである.昨年度までに開発した探索プログラムとともに,理論的な上界式と下界式を利用して,今年度も引き続いて,小さいnとtに対する並列比較回数を計算した.その結果として,16より小さいnに対して,U, V, Wに対する上界と下界のかなり良い値と一部正確な値を求め,特に,nが13以下について多くの正確な値を決定した.正確な値が未決定のまま残ったものの大部分はWに関するものであるが,一方で,Wに関するM. Aignerの結果を改良する値も発見した.今年度は,これらの計算のために,探索プログラムの高速化を実現したが,そのほか,新しい探索プログラムを独立に開発し,特にこれを結果の検証に用いた.本年度は,本研究の最終年度であり,まとまった部分を雑誌論文で発表した.
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