2000 Fiscal Year Annual Research Report
短寿命の甲殻類を用いた低濃度の有機スズ化合物の生物影響に関する研究
Project/Area Number |
12680540
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
竹内 一郎 愛媛大学, 農学部, 教授 (30212020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 信之 東京大学, 海洋研究所, 教授 (40101464)
田辺 信介 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (60116952)
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Keywords | 甲殻類 / 生物影響 / 低濃度 / トリブチルスズ / 内分泌撹乱物質 / 有機スズ化合物 / ワレカラ類 |
Research Abstract |
海洋生態系における内分泌かく乱物質の一種、有機スズ化合物は、1990年にトリブチルスズを含む防汚塗料を漁網や一部の船舶に使用することが禁止された。しかし、その後も沿岸域の海水中に残留していることが報告されており、低濃度でも内分泌撹乱物質としての生物影響が懸念される。今回の研究では、小型甲殻類のワレカラ類を対象に、低濃度のトリブチルスズがあたえる生物影響を検討した。ワレカラ類は、1)浅海域のガラモ場や養殖筏に高密度に棲息している、2)遊泳能力が極めて低い、3)世代期間は1〜2カ月と極めて短い等の特徴があり、生物影響評価に適した生物であると考えられている。 有機スズ化合物は難溶性のため、アセトンなどの溶媒にとかす必要がある。そこで、本実験前にアセトンの安定性と毒性影響を検討するため、トリブチルスズを溶解したアセトンを濾過海水に混ぜ実験用海水(100ug TBTCL+0.05ml acetone/L海水)を作成し、GC-FPD法により実際の溶解濃度の分析を行った。その結果、作成一週間後でも濃度の減少は認められなかった。また、このアセトン濃度ではワレカラ類には死亡がおこらないことも確認した。 次に本実験として、現在、日本近海で残留が確認されている低濃度トリブチルスズ濃度において、生物影響を検討するため、ワレカラ類の優占種であるホソワレカラを、卵の発生期間中、0〜10,000ng TBTCl/Lの5段階のTBT濃度に暴露し、孵化後の幼体を清海水で1世代以上飼育した。なお、0〜100ng/Lが現在のトリブチルスズ残留濃度に相当する。その結果、10ng/L区でも暴露期間中から死亡が続き、成熟までに生残率は50%以下に低下した。また、TBTの濃度の上昇に伴い、メスの比率が増加し、100、及び、1000ng/L区ではメスが80%以上を占めた。以上より、現在の残留レベルでも、ワレカラ類には、従来報告されている巻貝類のインポセックス(オス化)とは異なる生物影響が存在することが明らかになった。
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Research Products
(1 results)