2001 Fiscal Year Annual Research Report
瀬戸内海の海砂利採取に伴う濁度増加が生物生息環境に及ぼす影響
Project/Area Number |
12680545
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
門谷 茂 香川大学, 農学部, 教授 (30136288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田 邦尚 香川大学, 農学部, 助教授 (80207042)
石田 智之 香川大学, 農学部, 教授 (40184535)
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Keywords | 海砂利 / 懸濁粒子 / アマモ場 |
Research Abstract |
瀬戸内海における海砂利採取は1960年代、骨材需用の増加により高度経済成長に平行して進められた。特に、河川・山・陸砂の少ない西日本では重要視され、瀬戸内海沿岸の11府県で全国の採取量の7割を占めている。1987年のピーク時には香川県で年間約900万m3,減少傾向にある近年においても約500m3の海砂が採取されている。採取は現在、ポンプ式の採取船を用いており、砂利と向時に汲み上げられる海水がオーバーフローして船外に排出される。このときの吐水によって採取船付近では高濃度の濁りが生じ、周辺海域の透明度の低下を促していると考えられる。本研究では海砂利採取時に生じる濁りの実態とその海洋環境への影響、また採取による海底地形の変化について検討した。 海砂利採取船からの直接の排水はSS(懸濁粒子)量で350-650mg/l、採取船より50m離れた所では表層において20mg/lと高い濃度を示し、水深が深くなっても高濁度を保持した水塊ができていた。また採取船から300m離れた所ではバックグランド値(7.8±2.9mg/l)に近い値に戻っていた。光量子量においても同様の結果が得られたことから300mの範囲で高濃度の濁りの水塊は拡散し、ほぽ消失したと考えられる。LANDSAT衛星から表層SS量の広がりをみると影響範囲は、採取船一隻辺り139,000m2と見積もられた。また、15-30mg/lの面積が影響範囲の95%を占めていたが、30mg/l以上では濃度にともなう面積の減少が見られず、高濃度域で拡散が抑制されていることが示唆された。 また、濁水による当海域のアマモ場の海中光環境への影響についてみると、アマモの最低光要求量を表面光量の20%とした生息限界深度を見積もりから、5.9m以深では群落として生息できないことを示していた。この付近の水深は潮汐により2-6mと大きく変動し、水深がが6mに達する時期があることを考慮すると光による生長制限の可能性が考えられる。さらに衛星写享から定点に直接、高濃度の濁りがアマモ場に流入する場合が認められ、採取船付近の光条件下では生息が不可能であると見積もられたことから、直接高濁度水が流入しない場合において水深6mが生息の限界深度であり、高濁度水の直接の流入により消失する可能性が示唆された。
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