2001 Fiscal Year Annual Research Report
誘導結合プラズマ質量分析法による水生生物の元素分析から環境水の元素汚染評価
Project/Area Number |
12680546
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中川 久機 九州大学, 農学研究院, 助教授 (50091377)
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Keywords | 誘導結合プラズマ質量分析法 / 微量元素 / 生物標準試料 / 内標準法 / 標準添加法 / カワニナ / 部位中元素濃度 / 生物濃縮 |
Research Abstract |
水域の微量元素濃度は水生生物の元素濃度として反映されるので、水生生物の元素濃度から生息水域の元素汚染状況の評価が可能である。平成12年度に、生物標準試料を用いて試料前処理法および誘導結合プラズマ質量分析装置(CP-MS)による分析精度管理法を確立した。内標準法の分析値を参考にして標準添加法で定量する方法である。確立したICP-MS定量法によりギンブナ(Carassius auratus langsdorfii)臓器中元素濃度を定量し生息水域間の元素濃度の特徴を検討した。平成13年度には、巻貝類のカワニナ(Semisulcospira libertina)にICP-MS定量法を応用した。分析精度管理はムラサキイガイ標準試料で行った。分析対象元素は、Al、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、As、Cd、SnおよびPbとした。Se、MoおよびSbも、標準添加法で定量可能と考え分析対象元素とした。カワニナの中腸腺と生殖腺の分離は不可能なので分離せずに両部位を分析対称部位とした。カワニナを福岡県の淡水域で採取し、部位中元素濃度を定量し、元素濃度の特徴を検討した。研究結果を次のように要約する。(1)部位中元素濃度の採取地点間の比較から、大部分の元素について谷山川のカワニナの濃度が高く、長谷ダム、宇美川、多々良川の順に低濃度となった。谷山川には、Zn、Cr、Cdなどの元素が豊富であると推測された。(2)ギンプナ肝臓中元素濃度との比較から、カワニナ部位中元素濃度について、Cu、Se、MoおよびSbは同程度だが、他の元素は数倍から数百倍も高い値である。特に、Mn、Niは高濃度でありカワニナに特徴的な元素と考えらる。(3)Se濃度はCdおよびAl濃度と高い正の相関にある。現在、海産二枚貝のタイラギ(Atrina pectinata)の貝柱、中腸腺、鰓および腎臓中元素濃度から各部位元素濃度の特徴について検討中である。
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