Research Abstract |
堀川は名古屋市の中心部を流れ名古屋港につながる感潮河川であり,上流部には名城下水処理場からの放流水が大量に流れ込む。本年度は、これまで継続的に実施している流下方向の採水に加えて小塩橋,桜橋において深さ50cm問隔での採水を実施し,鉛直方向の重金属濃度から,感潮現象が汚染物質濃度に及ぼす影響について検討した。水質分析項目は前年度と同じであり,現場で水温,電気伝導度,DO,ORPを測定し,実験室にて採水サンプルを0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した後,ICP質量分析器で11元素(Al,Cr,Ni,Mn,Se,Cu,As,Zn,Pb,Sb,Cd)の濃度を分析した。得られた結果・結論を以下に要約する。 1.名城下水処理場付近において濃度が上昇する重金属として、Mn,Ni,Znが挙げられた。特にNiは,水質環境基準旧指針値の最大7倍近い高濃度が観測された。 2.下流で濃度上昇する重金属として,これまでのSeに加えて新たにCrが観測された。 3.鉛直方向の河川水中Ni濃度の変化が,淡水と海水との混合のみによってもたらされたと仮定して,電気伝導度の鉛直分布から予測したNi濃度の鉛直分布と実測値を比較した。その結果,順流時に予測値と実測値との差が大きくなり,逆流時には差が小さくなる結果となった。この結果は,昨年度の定点観測における河川水中Ni濃度の時間変化から考察した内容と一致する。 4.感潮現象とNi濃度の再上昇との関係は,満潮干潮という大きな潮位変化より,順流逆流という流れ方向の変化が,表層でのNi濃度に影響を与えていると推定される。
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