Research Abstract |
好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris R-47)は,2つのα-アミラーゼ(TVA1,TVA2)を持つ。これらは,デンプンに加えて,通常のα-アミラーゼがほとんど加水分解できない環状オリゴ糖であるシクロデキストリンやα-1,4,α-1,4,α-1,6が規則正しく繰り返す多糖であるプルランも分解できるという興味深い基質特異性を持つ。これまでに,TVA2の3次元構造をX線結晶解析により2.6Å分解能で明らかにし,TVA2は,通常のα-アミラーゼが持っていない120残基からなる新たなドメイン(Domain N)をN末側に持つこと,シクロデキストリンを認識できると考えられるPhe286残基を活性部位付近に持つこと,TVA2の活性部位は他のα-アミラーゼに比べて浅くプルランを認識するのに都合がよいことを明らかにしてきた。平成12年度においては,以下の研究および発表を行った。 (1)TVA2がどのように基質を認識するかを明らかにするために,触媒活性残基であるGluをAlaに置換したミュータント酵素(E354A)を合成し,基質の1つであるβ-シクロデキストリン(β-CD)との複合体のX線データを放射光(SPring-8)を用いて収集し,3.0Å分解能で精密化を行い(R-factor=0.208),Phe286がβ-CDを認識するのに極めて重要な役割を果たしていることを確認した。さらに,Phe286を他の疎水性アミノ酸(Ala,Leu)に置換したミュータント酵素を合成,反応動力学パラメータを測定し,X線構造からの知見を支持する実験データを得た。これらの成果は,J.Biochem.誌に発表した。また,低分解能(3.5Å)ながら,他のミュータント酵素(D325N)を用いて,α-1,4結合によりグルコースが6つ結合したオリゴ糖(G6)との複合体の構造もX線結晶解析により決定し,G6は,シクロデキストリンとは,異なった配向で酵素に結合している可能性が示唆された(Biosci.Biotechnol.Biochem誌に発表)。現在,高分解能での構造解析をすすめている。 (2)Domain Nの役割を解明するため,Domain Nを削除したミュータント酵素を合成し,酵素活性が著しく低下することを見出した(Biosci.Biotechnol.Biochem誌に発表)。現在,詳細な検討を行っている。 (3)TVA2とアイソザイムであるTVA1について,X線結晶解析に適した結晶化条件を決定したのでProtein and Peptide letters誌に発表した。
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