Research Abstract |
好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris R-47)は,2つのα-アミラーゼ(TVA1, TVA2)を持つ。これらは,デンプンに加えて,通常のα-アミラーゼがほとんど加水分解できない環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CD)やα-1, 4, α-1, 4, α-1, 6が規則正しく繰り返す多糖であるプルランも分解できるという興味深い基質特異性を持つ。これらの酵素の基質認識機構を解明するために,平成13年度においては,以下の研究および発表を行った。 (1)TVA2がどのように基質を認識するかを明らかにするために,触媒活性残基を置換したミュータント酵素E354AおよびD325Nを合成し,基質との複合体のX線データを放射光を用いて収集し構造解析を行った。E354A/β-CD(3.0Å分解能),D325N/メチルβ-CD(3.5Å),D325N/マルトヘキサオース(3.5Å)の3種類の構造を決定することができた。その結果,Phe286がβ-CDを認識するのに極めて重要な役割を果たしていること,マルトヘキサオースは,シクロデキストリンとは,異なった配向で酵素に結合しているのがわかった(J.Biochemistry誌,Biosci. Biotechnol. Biochem誌に発表)。現在,高分解能での構造解析を他の基質複合体も含めてすすめている。 (2)TVA2のβ-CD認識機構を明らかにするため,Phe286を他の疎水性アミノ酸(Ala, Leu, Tyr, Trp)に置換したミュータント酵素を合成,反応動力学パラメータを測定し,X線構造からの知見を支持する実験データを得た(Carbohydrate Res.誌に発表)。 (3)Domain Nの役割を解明するため,Domain Nを削除したミュータント酵素を合成し,酵素活性が著しく低下することを見出した(Biosci. Biotechnol. Biochem誌に発表)。現在,Domain N中に高頻度に存在するTyr残基に注目し,部位特異的変異法・反応動力学パラメータを測定により,Domain Nの役割りについて検討している。 (4)TVA2とアイソザイムであるTVA1について,結晶化条件を決定し(Protein and Peptide letters誌に発表),1.6Å分解能で構造を決定した。TVA1も,TVA2同様,通常のα-アミラーゼと異なり,N末側にDomain Nを持っていたが,その配向は,大きく異なっていた。TVA2においては,Domain Nがダイマー形成に関わっているのに対し,TVA1においては,酵素全体の構造安定性に大きく関わっていることが解明された(J.Mol.Biol.印刷中)。
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