2000 Fiscal Year Annual Research Report
トランスジェニックマウスを用いた嗅覚受容体遺伝子の発現制御機構の解明
Project/Area Number |
12680627
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坪井 昭夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (20163868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名川 文清 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (10241233)
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Keywords | トランスジェニックマウス / 嗅覚受容体遺伝子 / 遺伝子クラスター / 遺伝子発現制御 / シスエレメント / YACベクター / 嗅神経細胞 / 神経軸索投射 |
Research Abstract |
申請者らは、嗅上皮において個々の嗅細胞が一千種類に及ぶ嗅覚受容体遺伝子群の中から一種類のみを選択的に発現する制御機構は何かを明らかにする為、マウス14番染色体上に隣接して存在する、3つの相同性の高い嗅覚受容体遺伝子(MOR28-MOR10-MOR83)を同定し、それらの基礎的な解析を行ってきた(Tsuboi,et al.,J.Neurosci.,19,8409-8418,1999)。本研究において我々は、マウス嗅覚受容体遺伝子MOR28クラスターの領域をYAC(yeast artificial chromosome)ベクターに導入してトランスジェニックマウスを作製し、MOR28遺伝子の機能的な発現に成功した。また、lacZとGFP遺伝子で別々に標識した2種類のMOR28遺伝子の発現を、トランスジェニック系で解析したところ、それぞれが異なる嗅細胞で相互排他的に発現することが示された。これは、同一の染色体部位に複数個導入された同じMOR28トランスジーンの間でも、相互排他的発現の見られることを実験的に示した最初の例として注目された(Reed,Nature Neurosci.,3,638-639,2000)。また我々は、460kbのYAC DNAの上流或いは下流を欠失させたクローンを作製し、それらのトランスジェニックマウスを解析した結果、MOR28遺伝子の上流約100kb及び下流約100kbの領域が、嗅細胞における嗅覚受容体遺伝子の発現制御に重要である事を明らかにした。 嗅覚受容体遺伝子MOR28の発現には、その上流約100kbの領域が重要である事が示されたので、平成13年度では、この領域に予想される制御エレメントを様々な欠失を導入する事により絞り込んでいく。最近、我々のマウスゲノム解析及びヒトゲノムプロジェクトにおいて、OR28遺伝子クラスター領域に関するDNA塩基配列が決定された。その解析結果から、マウスでは7つの嗅覚受容体遺伝子(MOR28-MOR10-MOR83-MOR29A-MOR29B-MOR30A-MOR30B)がタンデムに隣接して存在すること、またMOR28遺伝子の転写開始点上流100kbの領域には、マウスとヒトの間で相同性の高い2kbの領域が唯一存在することが判明したので、この領域を欠失させることにより、MOR28クラスター内の受容体遺伝子の発現に対する影響を調べる予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Serizawa,S.: "Mutually exclusive expression of odorant receptor transgenes."Nature Neuroscience. 3・7. 687-693 (2000)
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[Publications] Ishii,T.: "Monoallelic expression of the odourant receptor gene and axonal projection of olfactory sensory neurones."Genes to Cells. 6・1. 71-78 (2001)
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[Publications] Sengoku,S.: "Axonal projection of olfactory sensory neurons during the developmental and regeneration processes."NeuroReport. 12・5(in press). (2001)