2000 Fiscal Year Annual Research Report
光受容イエロー蛋白質の発色機構および光反応に関する計算化学的研究
Project/Area Number |
12680653
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
櫻井 実 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教授 (50162342)
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Keywords | イエロー蛋白質 / バクテリオロドプシン / オプシンシフト / 溶媒効果 / QM / MM法 |
Research Abstract |
イエロー蛋白質は、暗状態で446nmの光を吸収し、引き続く光反応サイクルを通して、負の光走性に関わるシグナル伝達を行う。従って、この蛋白質の機能を解明するためには、まず可視光を吸収するメカニズムを解く必要がある。本年度は、まず、われわれが開発した連続体近似溶媒効果理論に基づく量子化学計算と発色団(クマル酸チオールエステル)のモデル化合物に対する分光学的実験より、発色機構の解析を行った。具体的には、吸収波長制御のメカニズムを、1)カウンターイオンの効果、2)近傍残基との水素結合の効果、3)非結合相互作用(誘電応答)の効果の3つに分割し、それぞれを定量的に評価することに成功した。その結果、1)と3)は、それぞれ5300cm^<-1>および700cm^<-1>の長波長シフト、2)は1600cm^<-1>の短波長シフトを誘起することが判明した。次いで、蛋白質の3次構造の効果と電子分極の効果をあらわに考慮に入れた解析を行うため、量子化学理論と静電気学理論を融合した新規な吸収波長計算法(QM/MM-CI法)を開発した。この方法では、アミノ酸残基の各共有結合をシリンダー形状の誘電体として近似し、それぞれに固有の分極率を与えることによって、外部電場(実際は発色団からの電場)の変化による結合の電子分極を記述するようになっている。また、他のQM/MM法と異なる点は、基底状態に関しては、古典近似(MM近似)すること無しに、全原子量子化学計算により電子構造を求めている点にある。本年度は、この計算法を、イエロー蛋白質と同じく、可視光を吸収する蛋白の代表であるバタテリオロドプシンに適用し、新規な波長制御メカニズムを提案することに成功した。来年度は、この手法をイエロー蛋白質に適用する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Hirohiko Houjou,Yoshio Inoue,Minoru Sakurai: "Study of th Opsin Shift of Bacteriorhodopsin : Insight from QM/MM Calculations with Electronic Polarization Effects of the Protein Environment"Journal of Physical Chemistry B. 105. 867-879 (2001)