2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12680787
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
稲瀬 正彦 近畿大学, 医学部, 教授 (80249961)
|
Keywords | 前頭連合野 / 入力 / 出力 / 機能単位 / 順行性標識法 / 逆行性標識法 |
Research Abstract |
本研究は、大脳皮質前頭連合野の機能的構成を明らかとすることを目的とする。前頭連合野は、人間を含めて霊長類の最高次の脳領域である。その機能的構成に関して、二つの対立する仮説、情報ドメイン仮説と二段階仮説がある。情報ドメイン仮説によれば、前頭連合野内の各小領域では、それぞれ異なる種類の情報が処理される。たとえば、腹外側部では形態情報が、背外側部では空間情報が処理される。一方、二段階仮説によれば、腹外側部で様々な種類の情報を一時的に貯蔵し、背外側部ではその貯蔵されている情報に操作を加え出力する。本研究では、前頭連合野の腹外側部と背外側部の入出力を調べ、各領域でどのような種類の情報が処理されているかを明らかにすることにより、二つの仮説を検証を試みる。本年度は、前頭連合野の腹外側部と背外側部において、空間情報を処理する大脳皮質頭頂連合野と、形態情報を処理する側頭連合野からの入力がどのような形で入ってきているか、を調べた。もし、情報ドメイン仮説が確かであれば、頭頂連合野と側頭連合野からの入力はそれぞれ背外側部と腹外側部へ並行して送られ、一方、二段階仮説が確かであれば、頭頂連合野と側頭連合野からの入力が収束して背外側部、あるいは腹外側部に送られることになる。前頭連合野の背外側部と腹外側部に、それぞれに異なる逆行性標識物質を注入し、各領域への入力を比較したところ、背外側部へは主に頭頂連合野から、腹外側部へは主に側頭連合野から入力がみられた。しかしその一方で、頭頂連合野や側頭連合野の小領域から、背外側部と腹外側部の両方への投射が存在することも明らかとなった。この結果から、単純にどちらかの仮説を支持することはできず、今後、入力構成の詳細を明らかにすると共に、出力構成を併せて調べることにより、前頭連合野の機能的構成を解明していく予定である。
|