2000 Fiscal Year Annual Research Report
Tsc1ノックアウトマウスを用いたhamartinの機能解析
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12680819
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
小林 敏之 (財)癌研究会, 癌研究所・実験病理部, 研究員 (40260070)
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Keywords | Tsc1遺伝子 / ノックアウトマウス / 結節性硬化症 / 腎腫瘍 / Hamartin / 肝血管腫 / 胎生致死 / 動物モデル |
Research Abstract |
2つの異なる結節硬化症原因遺伝子であるTsc1とTsc2の産物の機能、並びに両遺伝子変異による腫瘍発生の分子機構を明らかにするため、我々はTsc1ノックアウトマウスを作製し、これまで我々が作製しているTsc2ノックアウトマウスとの表現型の比較検討を行った。ジーンターゲッティング法により、Tsc1のエクソン6から8を欠失する変異を持つノックアウトマウスの系統を樹立した。F1ヘテロ変異体マウス同士の交配を進めた結果、Tsc1ホモ変異体は胎生10.5日頃に死亡すること、神経管の融合不全を頻発することを明らかにした。一方、Tsc1ヘテロ変異体マウスの長期観察を行ったところ、生後1年までの個体においては肉眼的な腎腫瘍は観察されなかったものの、生後1年3ヶ月から1年6ヶ月を経た個体14例のうち9例において肉眼的な腎腫瘍の発生が認められた。残る5例においても組織学的検索により腎腫瘍の発生が認められた。また、上記14例の個体のうち10例においては肝血管腫の発生が認められ、さらに一部に子宮筋肉腫や尾部の血管腫も観察された。これらの胎生致死、腫瘍発生の表現型はTsc2ヘテロ変異体マウスの場合に類似するものであった。Tsc1ヘテロ変異体マウスに生じた腫瘍においては野生型Tsc1アレルの欠失が検出されたことから、それらの腫瘍発生はTsc1遺伝子の2ヒットを起因とするものと考えられた。以上の解析より明らかとなったノックアウトマウスの表現型の類似性から、生体内におけるTsc1産物とTsc2産物の機能の関連性が示唆された。しかしながら腎腫瘍が発生する時期は明らかにTsc1ヘテロ変異体マウスの場合の方が遅いこともわかった。これらの相違点が両遺伝子産物の機能の違いを反映している可能性もある。今後Tsc1及びTsc2ノックアウトマウスを併用し、生体内におけるTsc1とTsc2産物の機能を明らかにすると共に、両遺伝子変異が関与する腎がんの発生機構を解明していく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Fukuda,T., et al.: "Distribution of Tsc1 protein detectedby immunohistochemistry in various normal rat tissues and the renal carcinomas of Eker rat."Laboratory Investigation. 80. 1347-1359 (2000)
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[Publications] Fukuda,T., et al.: "A new western blotting method using polymer immunocomplexes : detection of Tsc1 and Tsc2 expression in various cultured cell lines."Analytical Biochemistry. 285. 274-276 (2000)