2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710002
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
橋本 康二 筑波大学, 哲学・思想学系, 講師 (10292484)
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Keywords | 真理対応説 / 真理 / 対応説 / ラッセル / Russell / ヴィトゲンシュタイン / Wittgenstein |
Research Abstract |
対応真理概念は実質的真理概念を代表する真理概念である。この概念を弁護する立場は「真理対応説」という名称で知られている。真理対応説は、真理は真理の担い手(観念、命題、文、など)と真理の制作者(現実、事実、事態、など)の間の関係に存する、と主張する。真理対応説は哲学の最初期から主張されてきたが、20世紀の初頭にラッセルやヴィトゲンシュタインによって明確に定式化されたと言われている。そこで、本研究は、彼らの真理対応説を検討し、その内実を確定することを試みた。その結果、以下のような知見が得られた。ラッセルは『哲学の諸問題』と『論理的原子論の哲学』で、異なるタイプの真理対応説を展開した。ヴィトゲンシュタインの真理対応説は『論理哲学論考』で展開されている。これら三つの真理対応説は、それぞれ異なる仕方でではあるが、対応真理概念を明確化し、理解可能な概念にしようとしている。しかし、いずれも「疑似真理対応説」とでも呼ぶべき立場に帰着する。疑似真理対応説の本質は次の図式で表される。 xは真である=xはyと関係Rに立ち、yは性質zを有する 疑似真理対応説は真理対応説ではない。なぜなら、このように分析された疑似真理対応説によると、真理は関係Rではなく性質zに存することになるからである。つまり、通説に反して、ラッセルもヴィトゲンシュタインも真理対応説の定式化に失敗しているのである。さらに、この議論は、他の真理対応説の定式化の試みも、同様に疑似真理対応説に帰着するのではないか、という可能性を強く示唆している。以上が、本年度の研究で得られた成果である。
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Research Products
(1 results)