2000 Fiscal Year Annual Research Report
昭和戦前期における「宮中新体制」の成立と崩壊に関する研究
Project/Area Number |
12710183
|
Research Institution | Morioka Junior College,Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
後藤 致人 岩手県立大学盛岡短期大学部, 講師 (80310142)
|
Keywords | 宮中新体制 / 昭和天皇 / 木戸幸一 / 東條英機 |
Research Abstract |
年度途中に採択されたこともあり、今年度は、「宮中新体制」論を展開するうえでの基礎的資料の収集を主とした。来年度に一定の成果をあげる予定であるが、研究の方向性は以下の通りである。 私が提唱する「宮中新体制」とは、1940年(昭和15)に近衛新体制運動に連動して宮中に新体制が成立した以降を指し、その中心は内大臣木戸幸一、昭和天皇となり、宮中の思想も西園寺公望流立憲主義から天皇権威による国家機構の再統合を求める論理へと転換していった。この「宮中新体制」の分析のためには、内大臣木戸幸一の宮中における位置づけ、戦時中国家機構の再統合を進めた東條英機の「宮中新体制」における位置づけが必要となる。 木戸幸一は、「宮中新体制」の構築に主導的立場にあった人物であり、また『木戸幸一日記』をはじめとして木戸関係資料は、宮中論のみならず昭和戦前期の政治史研究において基盤といえる資料的位置にある。しかし木戸幸一論、『木戸日記』はこの30年近くも大きな進展がみられない。近年発見された多くの宮中関係資料を駆使して、『木戸日記』を本格的に見直したいと考えている。そして、基礎資料の再検討から「宮中新体制」の成立と崩壊を考察する。 また、従来の独裁者東條英機のイメージは、『昭和天皇独白録』に描かれた天皇の「下僚」的東條イメージと大きく異なるものである。東條英機を木戸・昭和天皇とともに天皇大権に関与して国家意志決定機構を再構築しようとした側面を捉え、「宮中グループ」と東條との密接な関係を考察する。
|