2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710186
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Research Institution | The Tokugawa Reimeikai Foundation |
Principal Investigator |
太田 尚宏 (財団法人)徳川黎明会, 徳川林政史研究所, 研究員 (40321666)
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Keywords | 江戸幕府 / 郡代 / 代官 / 地域行政 / 伊奈氏 / 江戸周辺地域 / 鷹場 / 公金貸付 |
Research Abstract |
本研究は、江戸幕府の政治的・経済的基盤である直轄領の支配を担当した郡代・代官の農政のあり方を総合的な見地から明らかにしようと試みたものである。本研究では、右の目的を達成するため、(1)郡代・代官の幕府職制上の位置に関する検討、(2)郡代・代官を通じた幕府の地域行政に関する考え方の把握、という二つの分析視角を準備した。 平成12年度は、主として(1)の点に関する史料の収集および分析を行い、特に研究が立ち遅れている「郡代」職にかかわる検討に十分な時間をかけて、実証的な観点から以下の点について検証した。 1 代官頭の系譜を引く伊奈氏によって世襲されたといわれる「関東郡代」は、実際の幕府職制には存在せず、伊奈氏はあくまで「御代官」と位置づけられていたことを明らかにし、従来、関東郡代の職掌として考えられていた御鷹野御用や公金貸付は、代官の職務とは異なる「掛り御用向」としてとらえるべきである点を指摘した。 2 伊奈氏が担った「掛り御用向」のうち御鷹野御用について検討した結果、これが享保期の吉宗政権における関東支配の脆弱性を補完する機能を有したこと、御鷹野御用の所管を契機に伊奈氏が地域編成の性格を変えたことが明らかとなった。さらには御鷹野御用の持つ軍事的性格が伊奈氏の「御要害」防備の認識を顕在化させ、これを幕府が利用することで自然災害時や治安維持などの危機管理政策の展開を可能にした点を指摘した。 今年度は、いわゆる「郡代」職のうち、最も支配所高が多かった伊奈氏に関する分析が中心となった。次年度は、伊奈氏に関する検討を継続するとともに、他の「郡代」職についても分析し、幕府の地域行政のあり方にまで議論を進めたいと考えている。
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Research Products
(1 results)