2000 Fiscal Year Annual Research Report
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12710201
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
澤田 典子 静岡大学, 人文学部, 助教授 (50311650)
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Keywords | マケドニア / フィリポス2世 / カルキディケ / トラキア / テッサリア / ギリシアの国際関係 / アミュンタス3世 |
Research Abstract |
今年度は、前4世紀のマケドニアとギリシアの政治外交史を多角的かつ有機的に考察するという研究目的のため、まず、上部マケドニア・パイオニア・イリュリア・カルキディケ・トラキア・テッサリア・ボイオティア・ペロポネソス・エウボイアといったポリス世界の周辺領域について、フィリポス2世の政策及び勢力浸透の過程や、フィリポス以前の時期におけるマケドニアとの関わりを検討するという課題に取り組んだ。とりわけ、文字史料よりも考古学・貨幣学史料の比較的豊富なカルキディケ・トラキア・テッサリアを重点的に検討し、これらの地域に対するフィリポスの関心や、フィリポスの計画全体におけるこれらの地域の比重は、従来考えられてきた以上に大きなものであったことを明らかにした。また、マケドニア王国の安定化にとって非常に大きな意味を持った前4世紀前半のアミュンタス3世の治世におけるギリシアの国際関係をマケドニア側の視点から検討するという作業をこれと並行して進め、この時期のギリシア世界の錯綜した国際関係が、カルキディケ・トラキア・テッサリアにおけるのちのフィリポスの政策を規定する重要な要因になっており、アミュンタス3世とフィリポスの政策の間にかなりの連続性が見られるという試論を導き出した。今後は、他のギリシア諸地域における同様の考察からこの試論を補強していくとともに、ヘレニズム期へ移行していくアレクサンドロス大王の時代についても考察を深め、マケドニアの政策の連続性と変質や、前4世紀のギリシア史全体の文脈におけるマケドニアの発展の位置づけといった大きな問題にアプローチしていくことを課題としたい。
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