2000 Fiscal Year Annual Research Report
アナーキストの肖像に見られる欧米市民社会の精神構造(1880-1914)
Project/Area Number |
12710202
|
Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
田中 ひかる 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (00272774)
|
Keywords | アナーキズト / アナーキズム / 肖像 / カリカチュア / 市民社会 / 図像 / 欧米 / 犯罪 |
Research Abstract |
本年度は計画に従って、史資料の収集を行ない、まず先行研究の調査がなされ、国内外で刊行された関連文献を収集した。図像研究文献に関しては、ヨーロッパ各国において発表されたものが中心であった。本研究のテーマと合致している先行研究論文を一つだけ発見したが、これはアメリカのアナーキスト・カリカチュアを扱った短い論文であるため、参考とはなるが、本研究とはアプローチが異なる。以上の結果、本研究の課題がいまだ未開拓の対象であること、図像のみならず、詳細な言説分析および歴史的背景の理解が不可欠であることが確認された。次年度においては、本年度以上に、西洋近代史、とりわけ犯罪や社会的逸脱、それに対する市民社会の対応を扱った研究文献を検討する必要があることが分かった。次いで、国外で資料調査を実施し、アナーキズム史関連文献・史資料、主にドイツで刊行された定期刊行物に掲載された図像を収集した。ただし、滞在期間が短期であったため、定期刊行物に関する調査・収集は不十分である。したがって、欧米で刊行された定期刊行物に関する調査・収集は次年度以降にも継続することになる。他方、先行研究調査の過程で、19世紀における犯罪学で示された図像と言説が重要であることが判明し、イタリア犯罪学において形成されたアナーキスト・イメージに関する文献を収集し、一部を検討し、図像と言説の接点を把握し、今後の検討の手がかりを得た。他方、アナーキストの「実像」に関する調査を行ない、その一部を論文として発表した。結果として、史資料収集は先行研究の収集と言説分析が中心となり、図像を中心とした定期刊行物の系統的な調査・分析のほとんどは、欧米数ヶ国にわたるため、対象を絞り込んでも、その量が膨大であるという理由から、次年度に繰り越すことになった。しかし、本年度における調査・検討は、次年度に十分に活かされると期待できる。
|
Research Products
(1 results)