2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
追川 吉生 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (60313178)
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Keywords | 近世考古学 / 民俗学 / 民具 / 漆器椀 |
Research Abstract |
1.漆器椀の生産について 浄法寺漆器の産地である岩手県浄法寺町・安代町のうち、特に塗師が集中する集落を対象として、塗師への聞き取り・作業に利用していた家屋や残されている道具の計測を実施した。この調査を通して、塗師が施文に用いていた文様の見本や型紙を発見した。現在分析中であるが、これによって塗師が技術習得のために会津方面と交流があったことがうかがえ、また当地で生産していた漆器椀の具体的な種類が明らかになったので、今後どの範囲まで流通していたかが明らかにできそうである。また出土資料・伝世資料と、今回明らかになった塗師の文様帳との対比も今後実施すべき課題である。 2.漆器椀の流通について (1)漆器椀の組み物には、それらを収納するための箱が伴うことが知られている。しかし、それが購入者が別途用意したものであるか、漆器と共に販売されていたものであるかは明らかでなかった。今年度の塗師の調査に伴い、箱が漆器と共に誂えられていたことが明らかになった。これによって、箱に記されていた年号と、漆器椀の生産された時期とが重なることが判明した。遺跡から出土した漆器椀の年代を考える場合、本知見を実年代の基準として利用することが可能である。 (2)都内では江戸初期の遺跡から出土する漆器椀が限定される。そこで他の近世年において該期の出土資料を実見した。漆器椀はほぼ江戸から出土する資料と同じであるが、いくつかの漆器椀には相異点が存在する。今後、これが流通する漆器椀の生産地の違いであるか、あるいは時期差であるかといった点を更に検討していく必要がある。
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