2001 Fiscal Year Annual Research Report
弥生・古墳時代における鉄器文化の受容と変容-南九州を素材として-
Project/Area Number |
12710217
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中村 直子 鹿児島大学, 法文学部, 助手 (00227919)
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Keywords | 鉄器 / 南九州 / 古墳時代 / 弥生時代 / 鉄鏃 / 副葬品 |
Research Abstract |
本研究は,南九州の弥生・古墳時代の鉄器にみえる地域色と他地域との共通性を明確にし,土器様式の動向とあわせて見ることによって古墳時代後半期に増すと考えられる地域色がどのような性格を持つものなのかを考察することを目的としている。 昨年度は,南九州の鉄器,特に鉄鏃の分類・編年を行った。 今年度は,まず時期ごとに南九州に存在する複数の異なる墓制と副葬品である鉄器との比較を行った。基本的には,鉄器の種類や組み合わせは共通するものであったが,量や種類の豊富さなどに差異が認められた。やはり,古墳に近い地下式横穴墓が最も豊富な鉄器を有していた。地域においても,大規模な古墳群が多く存在する日向地方が南九州の中でも多くの鉄器を有している。 また他地域のものと比較した場合,古墳時代前半期よりも古墳時代後半期において,地域色の強い鉄器を有するという特徴がみられた。これは,斉一的な文化に移行する古墳時代の特徴と反するもので,南九州土器の変化の特徴とも一致するものである。製鉄遺跡が増加するのも古墳時代後半期であり,鉄器生産の在地化が,形態の在地化に反映されたものと考えられる。また一方,他地域からの情報の少なさもこれを促進しているものと考えられる。 それを顕著に示しているのは、薩摩半島南端部にみられる土壙墓であった。土壙墓には,顕著な階層差も認められず、弥生時代後期から古墳時代後期にかけて変化が見られない。副葬品である鉄器も,後半期のものは種類も豊富になるが,形態は在地化しており、導入期の弥生時代後期から祭祀形態が変化したとは考えられない。 鉄器からも土器からも,基本的に弥生時代後期後半期に導入した新しい要素を変化させずに古墳時代を通して保ちつづけている,逆にいえば,それ以後の新しい要素を採用しない結果が,強い地域色として表れているものと結論づけることができた。
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