2000 Fiscal Year Annual Research Report
近代東アジア諸国(特にベトナム)における「国語」概念形成過程の研究
Project/Area Number |
12710274
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩月 純一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (80313162)
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Keywords | 社会言語学 / 言語政策 / ベトナム / 東アジア / 漢字文化圏 / 漢文教育 / 国語 |
Research Abstract |
本年度は主に社会言語学、言語政策論及び言語社会史に関する研究動向のフォローと、日本・朝鮮・中国の「国語政策」関係の資料、書籍収集を中心に行い、ベトナムに関しては、新たな研究動向に関する書籍やや新資料の購入も行ったが、主にはすでに本研究開始以前に収集した資料の整理に集中した。また、中国語南方方言における「漢文/文言」からの萌芽的な「ずれ」(「ベトナム語」形成とある意味で並行性を認めうる)を示す資料を探索するため、中国厦門で福建語関係資料を収集した。 上記の調査活動を通じ、特に注目すべき点として浮かび上がってきたのは、近代東アジア諸国においては、文字としての「漢字」、及びテクストとしての「漢文」を何らかの形で教育課程に取り入れている(いた)点では共通するものの、「漢字/漢文」とそれに並行しつつ対抗する「国語」という概念の間の境界が微妙に異なることである。「漢字」を「国語」の内部に置く日本では、「漢字」は「現代日本語」を書くための手段として主に「国語科」で教授され、「漢文科」は「国語」理解を助けるための「古典」読解の場に特化している。これに対しベトナムでは、「国語(クォックグー)」はローマ字のみで書かれ、「漢字」は「国語/ベトナム語」の外部に置かれるものと観念されている。結果として、植民地時代、及び独立後のサイゴン政権下の公教育カリキュラムにおける「漢字」教育は、「国文(国語)科」では行われず、「漢文科」でのみ行われていた。さらにベトナムの「漢文科」教育は、「国語」理解を助けるためという位置づけについては日本と共通するものの、文字としての「漢字」に対する理解を日常生活とリンクさせるため、いわゆる「漢文古典」にとどまらず、現代的な諸概念を叙述するテクストを取り入れており、日本の「漢文教育」とは大きな違いを見せている。こうした違いが生ずる歴史的要因について、来年度も研究を進めたい。
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Research Products
(1 results)