2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710289
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
平塚 徹 京都産業大学, 外国語学部, 助教授 (70268093)
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Keywords | フランス語 / 疑問詞疑問文 / 文体的倒置 / 複合倒置 / 修辞疑問文 / 焦点 / 主題 / 「は」と「が」 |
Research Abstract |
一般に主節平叙文においては,文体的倒置は主語の焦点化の操作と考えられている.それに対して,フランス語の疑問詞疑問文における文体的倒置も,主語の焦点化の操作とする考え方が存在していた.しかし,疑問詞疑問においては疑問詞が焦点であることを考えても,疑問詞疑問文における文体的倒置を主語の焦点化とは考えられない. 本研究では,もし主題・焦点という概念を用いて考えるなら,疑問詞疑問文における文体的倒置は,焦点ではなくむしろ主題に対して適用される操作であることを示した.先ず,この仮説は,不定代名詞が文体的倒置が適用しにくいという事実と良く合致している.また,前提が疑問に付されている疑問詞疑問文や,前提が棄却される疑問詞疑問文(これは,伝統的に修辞疑問文と呼ばれているものに相当する)においては,複合倒置が好まれ,文体的倒置は困難であることが知られていたが,そのことを疑問詞疑問文における倒置現象一般を支配する要因によって説明することはなされていなかった.しかし,意外な情報を伝える場合には主題化が抑制されることを踏まえると,上記の事実は,疑問詞疑問文における文体的倒置が主題に対して適用される操作だと考えることによって説明されるのである.しかもこのように考えると,フランス語の疑問詞疑問文における文体的倒置と複合倒置の使い分けが,日本語の疑問詞疑問文おける「は」と「が」の使い分けとある程度の平行性を示すことも説明できる. しかし,主題性だけでは説明できないデータも存在しており,これも含めて包括的な説明をするためには,フランス語の疑問詞疑問においては主語が疑問を発する上で他の部分より重要である場合に文体的倒置が適用されると考えなければならないことを明らかにした.しかもこのことにより,フランス語の2つの倒置の使い分けと日本語の「は」と「が」の使い分けの部分的平行性だけでなく,相違点も説明できるのである.
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