2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12720007
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宇田川 幸則 関西大学, 法学部, 専任講師 (80298835)
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Keywords | 現代中国法 / 紛争解決 / 法意識 |
Research Abstract |
1.法規定上、行政機関が私人間紛争の処理にあたるとされているものを大別すると、(1)婚姻・家事・相続・債務・水利等生活・生産に関する問題により惹起された紛争で、矛盾の程度が軽微な「民間紛争」、(2)労働紛争、(3)契約をめぐる紛争、(4)環境汚染にともなう損害賠償、(5)知的財産権をめぐる紛争、(6)土地使用権をめぐる紛争、(7)その他、個別の不法行為にともなう損害賠償、であり、(1)については基層人民政府および公安機関が、また(2)〜(7)についてはそれぞれの主管部門が、その処理にあたるとされる。 2.どのような手法・形態をつうじて処理されるか、法規定上は単に「処理する」とのみ規定するものと、「調解する」と規定するものとが混在しているが、前者についても、運用上は「調解」が行われている。 3.行政機関による紛争処理(調解)の結果に当事者が満足しない場合、人民法院に対して訴訟を提起することができるものがほとんであるが、そこで調解と訴訟との間の関係が問題になる。これは、(1)調解を経ることを訴訟提起の前提条件とするもの、(2)調解と訴訟とが並列的に存在し、当事者の選択に任されているもの、(3)当事者の選択に任されているが、運用上はまず調解に向けられるもの、に分類できるが、規定上は(2)が大部分であり、実務上は(3)が選択される場合が多い。 4.このような紛争処理のチャネルが用意されている背景には、利用者(=人民)から見た場合、(1)訴訟に比べ費用が格段に安価(たいていは無料)であること、(2)司法機関に比し行政機関の数が圧倒的に多く、便利であり、またそれ故に司法機関よりも身近であって、気軽に利用できること、が指摘でき、他方行政機関から見た場合、(3)人民に対するサービスの一環である、(4)軽微な紛争=矛盾が重大な矛盾にまで発展するという紛争観から、早い段階で矛盾を解決する必要があること、が指摘できる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 宇田川幸則: "1999年の中国法令"比較法研究. 61. 244-251 (2001)
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[Publications] 宇田川幸則: "中国における司法制度改革-裁判官法の制定と「裁判官の独立」を中心に"社会体制と法. 2. 39-53 (2001)
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[Publications] 宇田川幸則: "郭通暉「中国法治化的道路」"関西大学法学論集. 51・1. 113-139 (2001)
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[Publications] 宇田川幸則: "中華人民共和国養子法(収養法)の改正"戸籍時報. 531. 16-32 (2001)
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[Publications] 宇田川幸則: "劉士国「集体所有権若干理論観点評析」"関西大学法学論集. 51・5. 133-149 (2002)
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[Publications] 宇田川幸則: "2000年の中国法令"比較法研究. 62(校正中). (2002)