2000 Fiscal Year Annual Research Report
社会福祉基礎構造改革に伴う社会福祉行政の変容とその法的統制
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12720014
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
前田 雅子 大阪府立大学, 社会福祉学部, 助教授 (90248196)
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Keywords | 社会福祉行政 / 社会福祉基礎構造改革 / 措置制度 / 福祉サービスを受ける権利 / 社会福祉の公的責任 / 指定 |
Research Abstract |
今年度は、社会福祉法、身体障害者福祉法その他の改正(2000年6月成立)によって、福祉サービスの利用に関する権利義務関係、および社会福祉に係る国家責任がどのようなものに変容するのかを検討し、社会福祉行政の法理の新たな構築の手がかりとなる課題を析出することに力点を置いた。 この検討では、まず、法改正により導入された「福祉市場」に参入している事業者の「指定」という規制のしくみを対象に、利用者のサービスを受ける権利の実現および福祉サービスの水準の維持・向上策としての有効性如何という視角から検討を行った。ここから、「措置制度」下でサービスの給付主体であった地方公共団体が費用助成主体に代わることで、施設の最低基準も給付基準から純然たる規制基準にその規範的意味が変化したこと、「指定」と事業自体に対する規制とが併存することになり、指定の取消が事業規制といかにリンクするのか法制度上も運用上も不明確であること等が明らかとなった。福祉サービスとそのニードの特殊性に鑑みた規制システムの構築と、事業者とのサービス利用契約に及ぼす効果に関する法理論の検討が課題となる。 次に、契約によるサービス利用方式が徹底されたことで、判断能力の十分でない利用者に対する援助の仕組みとして社会福祉法上に法定化された「福祉サービス利用援助事業」について、このような利用者の法定給付およびサービス受給を確保するうえでどの程度の有用性を持ちうるかを、ヒアリングも交えて運用実態を検証しつつ検討した。これにより、同事業の援助利用契約の締結時に要求される判断能力を持たない利用者のサービス受給の確保として、社会福祉の各法で例外措置として規定されている地方公共団体による「職権措置」を実施すべきケースが相当数存在するが、これが十分に機能していない現状が明らかとなった。社会福祉行政における職権主義の規範的意味と職権措置を行う地方公共団体の義務に関する法理論の形成という課題が析出された。
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Research Products
(1 results)